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連載小説
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8−
リザードンの言う通り、太陽は今すぐにでも山の影に隠れてしまいそうなぐらい、辺りは夕暮れの色に染まっていた

さっきまで、太陽が眩しかったのが夢のようだった

自分がどれだけ眠っていたのかを痛感したブイゼルは、ちらりとリザードンの方を向いた

「何だ?」

「えっ! あ、いや……その」

「ん?」

ズイッとブイゼルに顔を近づけるリザードン

リザードンの温かい吐息がブイゼルに吹きかかる。バンギラスとは違った優しい雰囲気がした

「……さっきは、ありがとう……」

それを聞くと、リザードンは口をつり上げて笑った。少し開かれた口元からは、真っ白な牙が姿を見せていた

「どういたしまして」

そう言うと、リザードンは姿勢を低くして羽を広げた

「乗れ」

「えっ? えと……」

「お前が強く引っ張ったところで痛くもないからな、強引に乗ってもらって構わん」

リザードンに急かされ、ブイゼルはゆっくりとリザードンの背中に乗った

「落ちたら、口でくわえていくからな」

リザードンにそう言われ、掴んでいた手の力を更に入れた

対するリザードンは、楽しそうに喉の奥で笑っていた

「じゃあ、行くか」

バサバサと二、三度翼をはためかせた後、リザードンは力強く地面を蹴りあげた

ブイゼルはまるで内蔵が置いてかれたかのような感覚に襲われ、一瞬吐き気がした

「うっぷ……」

「おい! 俺の背中の上で吐くなよ?」

「は、ひゃい……」

しかし、すぐに吐き気は消え、吹き付ける風の気持ちよさに、思わず『自分にも翼があったらな……』と思ってしまった

その後の事は、ブイゼルには忘れられない出来事になっただろう

景色が後ろに吹っ飛んでいくという言葉がぴったりなぐらいの速さで、家に着くのが勿体無いと感じるほどに爽快だった

現に今ブイゼルは、興奮のあまりベッドに横になるものの、寝られずにいた

(明日、お礼をしなくちゃな。何がいいかな…あれ、そう言えば……)

そこでブイゼルはハッと気がついた。昼に採った木の実が無いことに
11/12/02 23:54更新 / マタタビ
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