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連載小説
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汚れた宝玉【下】【小】
「むにゃ、オシッコ……」
 そして翌朝。かれこれ十数時間も眠りこけていた彼の意識を現実に引き戻したのは、猛烈な尿意だった。ゴロリと寝返りを打って大の字になるベロリンガ。そこで薄目を開けた彼は夜が明けていることに気が付く。
「おっ、もう朝だ。……ふぁーあ、久しぶりに熟睡したなぁ!」
 寝起きの粘つく口を大きく開けてあくびをし、思い切り伸びをして起き上がるベロリンガ。雑菌だらけの不潔な舌でベロベロと顔中を舐め回して洗面を済ませ、太陽の方を向いて朝の日差しを浴びた彼は、体中に力が漲るのを感じる。
「んーっ! すっかり生き返った気分だ! おまけに頭も抜群に冴える! ……それもこれも君のおかげだよ! 本当にありがとう!」
 丸々と膨らんだ腹を愛おしそうに撫で回しながら謝辞を述べるベロリンガ。そこで彼は自分が失禁寸前であることを思い出す。
「……って! こんなことしている場合じゃなかった! もれ、もれっ、漏れるぅぅぅぅぅっ!」
 体をくねらせ始めるベロリンガ。退化しかけの手の代わりに、神経の発達した長い舌でモゾモゾと下腹部を弄った彼は、股の裂け目の中から雄の象徴を大急ぎで引っ張り出す。消えかけていた焚き火に狙いを定め、肩幅に足を開いたら準備は完了。体の中心にグッと力を込めた彼はジョボジョボと放水を開始する。
「ふぅぅ、なんとか間に合った! ……火の後始末はキチンとしないとね! 火事になったら大変だ!」
 股間と焚き火の間に黄金色のアーチをかけながら楽しげに呟くベロリンガ。完全に鎮火したのを見届けた彼は体の向きをくるりと変え、今度は獣道の真ん中に残ったままになっていたエーフィの大きな落とし物にビチャビチャと小便を引っかけ始める。
「こっちの後始末も忘れずに……っと!」
 彼女の仲間が捜しに来ないとも限らないのである。行為がバレて報復されないためにも、獲物が残した痕跡は一つ残さず消し去っておくのが吉だった。ホカホカと湯気立つ濃黄色の尿を浴びたエーフィの糞は一瞬で溶け尽くし、茶色い汚水となって獣道脇の草むらに押し流される。
「あぁ、気持ち良かったぁ……!」
 やがて放尿の勢いは衰え、最後には黄色い雫がポタポタと滴り落ちるのみとなった。恍惚の表情を顔いっぱいに浮かべながら大きく息を吐き出すベロリンガ。役目を終えた雄の象徴を股の裂け目の中に収納した直後――彼は胃袋の違和感に気が付く。
「うん? 変だぞ? 何か硬い感触が……?」
 爆睡している間に変なものでも飲み込んだのだろうか? そう考えると不気味でならなかった。途端に気分を悪くした彼は――
「んくっ……おえっ!」
 その場に胃の中の異物を吐き出してしまう。彼が素っ頓狂な声を上げたのは次の瞬間だった。
「なっ、なぁっ……!? なにこれ!? こんなものどこから!?」
 仰天したのは無理もないことだった。長い舌の上を滑り落ちて地面に転がったのは――直径数センチメートルはあろうかという深紅の宝玉だったからである。腕組みをした彼の眉間に深い皺が刻まれる。
「うーん……そこら辺に落ちているような代物じゃないよね、これ。となると、やっぱり食事が原因だ。オイラが最近に食べたのは……」
 そう考えると答えは一つしかなかった。たちまち笑顔になった彼はポンと手を打つ。
「あははっ、閃いたぞ! 昨日に食べた子の額の玉じゃないか! これだけは消化できずに溶け残ったんだ!」
 分かってしまえば怖くなかった。腰を屈めた彼はヒョイと宝玉を拾い上げ、表面の汚れを舌で綺麗に舐め取る。
「宝物にしちゃおうっと! 誰にも渡さないぞ!」
 言うが早いか大きな口の中にポイと放り込み、舌の付け根の裏側に仕舞うベロリンガ。回れ右をした彼は高々と拳を突き上げる。
「さぁ、いつもの場所でウンチして、今日も一日頑張るぞぉ!」
 たっぷりと脂肪の付いたお腹とお尻をユサユサと、大きな可愛らしい尻尾をフリフリと揺らしながら足取り軽く歩き始めた彼は――
 ブオォォォォッッ!
 ほぼ体重と同じ量の肉を大便に変え終えた直後だけあって強烈の一言。地鳴りのような屁を豪快にぶっ放して、茂みの奥へと消えていったのだった。
24/08/11 07:12更新 / こまいぬ
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