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連載小説
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暴君の末路【下】【大】【小】
「よし! このくらいの大きさでいいや!」
 そして翌朝。ギラギラと夏の太陽が照り付ける果樹園の片隅で、汗と泥に塗れながら穴掘りに勤しむベロベルト。それもようやく終わったところだった。額で玉になっていた汗をベロベロと長い舌で拭った彼は、その場にどっしりと腰を落とし、作ったばかりの肥溜めの上に跨る。
「ふぅ、なんとか間に合ったぁ!」
 寝床へ戻る前に寄り道して大正解だった。突如として襲いかかってきた便意との戦いに辛くも勝利して胸を撫で下ろすベロベルト。リラックスして体の力が抜けた次の瞬間――
 ブウゥゥゥゥッッ!
 尻穴からガスが勢いよく噴射される。鼻の粘膜が爛れるほどの汚臭も今日ばかりは爽やかに感じられた。嗅ぎ慣れた匂いを胸いっぱいに吸い込んだ彼は歓声を上げる。
「……おっ、出た出た! 進化して初のオナラ! ちゃんと口からお尻まで繋がった体に進化できていてよかったぁ! ここは進化前と一緒じゃないとね!」
 揺るぎない証拠が得られて一安心だった。それが栓だったらしい。続けざまに直腸へと便が雪崩れ込んでくる感触を覚えた彼は、両手を胸の前で構える。
「さぁ、進化して初のウンチだ! 気合い入れて踏ん張るぞぉ!」
 神聖なる儀式の幕開けだった。大声で宣言して穴の上に跨り直すベロベルト。スーッと鼻から息を吸い込んで、
「んんっ、んんんんんんんんっ……!」
 ジワジワと下腹部に力を込めていけば、いっぱいに押し広げられた尻穴からオーダイルの搾りカスがゆっくりとひり出され始める。硬すぎず、それでいて緩すぎない絶妙な柔らかさと滑らかさ。いきみ顔は恍惚の表情へと変わる。
「んはぁっ……!」
 気持ちいい。その一言に尽きた。長い舌でベロベロ舐め回して粘着質の唾液に塗れさせ、大きな口でグチャグチャ咀嚼して呑み下し、胃袋でトロトロに溶かして養分に変え、小腸で余すことなく吸収し尽くし、大腸で糞にして肛門からブリブリと絞り出す。食べる――それは究極の征服だった。ベロベルトは無上の充足感に酔いしれる。
「おおっ、太い……! オイラのベロくらいあるぞ……!」
 ふと足元に視線を落とすと、穴の底に尾を降ろした茶褐色の大蛇が蜷局を巻き始めていた。両者を見比べた彼は驚嘆せずにいられない。
 その一部は親友の二匹の胃袋に収まったとはいえ、進化前の自身よりも遥かに大きな獲物を平らげたのである。超大作になることは約束されているようなものだった。ワクワクを募らせるベロベルト。ひり出された大蛇は美しい螺旋を描きながら堆く積み重なっていく。
 いよいよ儀式も終盤。フィニッシュを決めるべく尻穴に渾身の力を込めようとした――次の瞬間だった。亡霊のごとく肥溜めの底から這い上がってきた茶色い悪臭が彼に襲い掛かる。
「うげぇぇぇぇぇぇっ!? くっ、くっさぁぁぁぁぁぁい!?」
 親指の爪を鼻の穴に突っ込んで絶叫するベロベルト。用を足しているのだから当たり前といえば当たり前だったが、いかんせん強烈すぎた。身悶えした拍子に危うく大蛇の胴体をねじ切りそうになるも、彼はギリギリのところで持ちこたえる。
 悪臭の原因は食べた物を溶かして養分に変える過程で発生する副産物。進化して消化能力が大幅に向上した結果、とんでもない量が生成されてしまったのだった。おまけに食べたのは肉ばかり。凶悪な臭いを放つ作品にならない訳がないのである。
 熱い、臭い、むさい。三拍子揃ってしまって苦笑するベロベルト。豪華なバーベキューパーティーで分厚い脂肪のコートを一層に分厚くしたものだから、蒸し風呂のような暑さだった。おまけに果樹をオーダイルに蹴り倒されて日当たりが良くなってしまったので、全身から噴き出す脂汗の勢いは留まるところを知らない。穴掘りで体に付着した泥も今や大半が汗で洗い流された後だった。
 この三重苦から逃れるためにも早く終わらせねばならなかった。どれだけ酷くても所詮は自分の体臭。やがて鼻が慣れてしまった彼は最後の踏ん張りに力を込める。ぐるりと頂上の一巻きをひり出した彼は――
 ブリッ! ベチョッ! ……ブオォォォォッッ!
 腸液に塗れた大蛇の頭を産み落として聖なる儀式を締め括るのだった。だらしなく舌を垂らして放屁した彼は表情を蕩けさせる。
「ぬっはぁぁぁぁぁぁっ……! ぜぇんぶウンチにしちゃったぁ……!」
 征服感、達成感、そして少しの背徳感。全て入り混じって絶大な快感となって押し寄せてくる。半開きの口から涎を垂らした彼は、ゾクゾクとした興奮に体を震わせるのだった。
「……さぁて、どんな作品に仕上がったかな?」
 儀式が終わったら待ちに待った鑑賞タイムだった。尻を拭くのも忘れて一歩後ろに引いたベロベルトは、記念すべき初作品と対面する。
「おぉっ!? おおおおおおおおぉっ!」
 思わず鼻を摘まむほどの汚らしさ、もとい目を見開くほどの美しさだった。太さ、長さ、そして螺旋の形状。何もかもが前作を凌駕していた。彼の瞳がキラキラと輝く。
「うーん、こりゃ立派だ! あの子みたい! ……なんて彼女の耳に入ったら締め落とされるから気を付けないと!」
 真っ先に連想したのは蜷局を巻いたジャローダの姿だった。いないと知りつつも辺りを見回すベロベルト。そこで彼は昨日の出来事を思い出す。
「……残念だったね、君たち。オイラ史上の最高傑作だったハズが一日で塗り替えられちゃったワケだ。でも、記録は破られるためにあるものだから悪く思わないでよ、あははっ!」
 カップルの二匹をひり出した肥溜めを見つめて大笑いするベロベルト。彼の胃袋で毛の一本に至るまで溶かし尽くされたこと、最高に蒸し暑い日々が続いていること。両々相まって凄まじい速さで分解が進んでいるらしい。昨日に盛り付けたばかりの土饅頭も目に見えて小さくなっていた。
「……っと、いけない! よそ見している場合じゃなかった!」
 ハッと我に返るベロベルト。今は作品を見て楽しむ時だった。肥溜めの前で四つん這いになった彼は、ギリギリまで顔を寄せて観察し始める。間近で嗅いだら気絶するほどの激臭も、分厚いベロで鼻の穴を覆ってしまえば平気だった。
「うっひゃぁ、ドロッドロだ! 骨の一かけらも残っていないぞ! ははっ、本当にオイラの胃袋の中で跡形もなく溶けちゃったんだねぇ……」
 さながら粘土のようだった。感動的なまでの消化能力に舌を巻くベロベルト。鎧のように堅牢な鱗、巨大な爪と牙、そして筋骨隆々の肉体。全て自身の一部にした彼は得も言えぬ充実感に包まれる。
「うん、満足! しっかりと目に焼き付けたぞ!」
 それから数分後。あらゆる角度から作品を味わい尽くした彼は意を決して立ち上がる。どれだけ素晴らしい傑作でも最後は土に埋めてしまわねばならなかった。肥溜めの底を見つめた彼は、オーダイルに別れを告げるべく口を開く。
「……この日を生きて迎えることができて嬉しいよ。暴虐の限りを尽くしてきたんだから少しは償わないとね。大切に育ててきた果樹も蹴り倒してくれたことだし、オイラの果樹園の肥やしにしてあげるよ」
 口上を述べ終え、後は掘った土を埋めるだけ――の筈だったが、どういう訳か穴の前で仁王立ちになるベロベルト。彼は自身の股間に視線を落とす。
「でも……その前に!」
 ニヤリと口角を吊り上げるベロベルト。何か良からぬことを考えているのは明らかだった。
「オシッコかけて遊んじゃおうっと! 今度は君がバラバラになる番だよ!」
 多くの仲間をバラバラにされたのだから当然の権利だった。儀式を終えた直後から催していたこともあって既に我慢も限界。たっぷりとした腹の贅肉を両手でまくり上げた彼は、長い舌で股間を弄り始める。
「えへへっ、ここはどんな風に進化したかな?」
 まだ確かめていなかったので気になるところだった。ドキドキしながら雄の象徴を股の裂け目の中から引っ張り出すベロベルト。初対面を果たした彼は一瞬で顔を赤くする。
「おっ、おほぉっ……! 大きい……!」
 予想の遥か上だったので衝撃もひとしおだった。興奮のあまりに鼻の穴を全開にするベロベルト。雄にとってこれ以上の喜びはなかった。彼の顔に締まりのない笑みが浮かぶ。
「あぁ、進化して本当によかった! 嬉しいなぁ!」
 小さい。そんなコンプレックスに悩まされる日々も昨日までだった。過酷な環境を生き抜く中でホルモンの分泌が促進されたこと、良質な脂肪とタンパク質の塊であるカップルの二匹を食べて精を付けたこと。これら要素と進化の力が絶妙に絡み合って劇的な成長を遂げたのだった。
「……って! 見とれている場合じゃなかった! 漏れちゃう、漏れちゃう!」
 今は排泄に集中すべきだった。込み上げる尿意によって現実に引き戻されるベロベルト。ほじくり出した雄の象徴にベロを添え、腰を大きく前に突き出して狙いを定め、そして――
「遊びは終わりだ! ハイドロポンプ!」
 下手糞な声真似で叫ぶと同時に放水を開始する。触れるもの全てを切り裂く超高圧のジェット水流……とはいかないながらも、ひり出したての大便を粉砕するには十分すぎる水圧だった。大きな砲身から勢いよく発射された黄色い小便は、ビチャビチャと派手な水しぶきを上げながら次々にぶつかっていき、一瞬でオーダイルに大穴を穿ってしまう。
「えへへっ! このまま穴だらけにしてあげるよ!」
 しこたま飲み食いした翌朝だけあって凄まじい量だった。ベロを動かして放物線の軌道を変えながら次々に風穴を開けていくベロベルト。たっぷりと温かい尿をかけられて柔らかくなってしまったオーダイルは、為す術もなくボコボコに穴を開けられ、蜷局の一巻きすら分からないほど小さく切り刻まれてしまうのだった。
「そぉれ、トドメだ! 消えてなくなっちゃえーっ!」
 後は全て水底に沈めるのみ。クネクネと腰を振った彼は黄金色のシャワーを満遍なく浴びせ、水面にプカプカと浮いていた大便の欠片を一つ残らず溶かし尽くす。一日ぶりにして二度目。ここに世紀の大悪党はその姿形を未来永劫に失ってしまうのだった。
「ふぅぅ……! スッキリぃぃ……!」
 その後もジョボジョボと放尿を続けること数十秒あまり。最後の一滴を水面にポタリと垂らした彼は、大きく息を吐きながら雄の象徴を元あった場所に仕舞う。恨み、そして憎しみ。体外に排出されたのは大小便だけではなかった。彼はどこか晴れやかな面持ちでオーダイルと向かい合う。
「今度こそお別れだね。……もう見るからに臭そうだから早いとこ埋めてあげるよ」
 ホカホカと湯気が立つ視覚的な効果も合わさって一層に際立って感じられた。ヘドロの沼と化した肥溜めを見つめた彼は顔をしかめる。
「さぁて、とっとと終わらせて休んじゃおうっと!」
 そう宣言して、掘った土を肥溜めの底へ次々と蹴り込んでいくベロベルト。昨日のカップルとは異なり、全く同情の余地がない相手なので作業は効率よく進んだものの――
「……おえっ、くっさ。まったく、どんなゲテモノ食べたらこんな臭いウンチがひり出せるんだろうねぇ?」
 汚臭との格闘はヘドロの沼が完全に埋もれた後も続いた。どこかで聞いた覚えのある台詞を口走りつつ、彼は周囲の土を穴の上に寄せ集めては盛り付けていく。それを肥溜めの中から何も染み出てこなくなるまで繰り返したら作業は完了。山のように大きな土饅頭を作り上げた彼は、やり切った表情で両手を腰に当てる。
「これでよし、と! ……ふぅ! 臭かったぁ!」
 深呼吸した彼は解放の喜びを噛み締めるのだった。……が、それも束の間。彼の鼻がスンスンと動く。
「あれ? まだ何か臭うぞ……?」
 あちこち歩き回って臭いの発生源を探すベロベルト。やがて彼はそれが自身から最も近い場所であることに気が付く。
「オイラじゃないか。傷つくなぁ……」
 たくさん汗をかいて臭くなってしまったのだった。じっとりと蒸れた脇の下に鼻を近づけてベロンと一舐めすれば、すえた垢と皮脂の臭いが脳天に突き刺さる。
「はぁ……。体臭まで強くならなくていいのに……」
 進化して激太りしたのが原因だった。全身の汚れを舐め取るべく長い舌を伸ばした彼だったが――
「やっぱり止めた! どうせまた汚れるんだし! もう汗臭い体のままでいいや!」
 すぐに巻き取って口の中に仕舞ってしまう。体を清潔に保つのを面倒がるベロベルト。進化して怠惰な性格にも一段と磨きがかかってしまったのだった。
 これにて本日の営業は終了。もう食べ物を横取りされる心配もないので気楽なものだった。今日は一日ダラダラして過ごすと決めていた彼は、近くの木の根元に腰を下ろして幹に背中を預け、山頂からの景色に目を凝らす。雲一つない青空、地平線を埋め尽くす青々と茂った木々の数々。うんと伸びをした彼はマフォクシーの猟夫の言葉を思い出す。
「あぁ、ワクワクするなぁ! 来週が楽しみだぁ!」
 シャワーズ、サンダース、ブースター、リーフィア、グレイシア、そしてニンフィア。想像するだけで涎が出る名前の数々だったが、
「うーん、食べきれるかなぁ?」
 腕組みをした彼は苦笑いを浮かべる。悪事で儲けた金で美味いものを食いまくってきたのだろう。ことシャワーズとニンフィアの二匹はブニャットのように、ブースターに至ってはブーピッグのように丸々と太っていたので確信が持てなかった。昨夜の食事後の腹具合を手掛かりに、六匹を胃袋に収めきれるかどうか頭をひねり始めるベロベルト。やがて導き出されたのは――
「うん、食べきれるぞ! お腹を空かせておけば大丈夫!」
 可能という結論だった。両手をポンと叩いた彼の顔に会心の笑みが浮かぶ。
「きっと美味しい御馳走をいっぱい作って待っていてね! まぁ、一番の御馳走は君達だから別に作らなくても良いけど! あははっ!」
 丸太小屋の方向を見つめて舌なめずりするベロベルト。そんな事とはつゆ知らず、六匹は今日も普段どおりの生活を送り始めるのだった。
24/08/11 07:34更新 / こまいぬ
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