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連載小説
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恐怖の大王【下】【大】【小】
 ブビィィィィッッ!
「んんっ、臭い……!」
 そして翌朝。食いしん坊の山椒魚の怪獣に爽やかな目覚めをもたらしたのは、湿った屁の音と匂いだった。ビクリと身を跳ねさせると同時に両手で鼻を覆った彼は、すっかり周囲が明るくなっていることに気が付く。
「ふぁーあ、朝だ……よく寝たなぁ……」
 ムクリと上体を起こして大あくびをするベロベルト。そこで彼は最後に食べた獲物の存在を思い出す。
「そうだ、忘れてた。お腹いっぱいすぎてベロ袋に仕舞ったんだっけ。朝ごはん代わりにゴックンチョしちゃおうっと!」
 ベロ袋とは、喉奥の唾液を溜めておく袋の彼なりの呼び方だった。言うが早いか舌先でリーフィアをほじくり出そうとした彼だったが――
「あれ、いない……?」
 影も形も特有の青臭い風味すらなかった。ベロ袋の内側を隅々までなぞった彼は首を傾げる。
「もう溶けちゃったのかな? それとも……」
 ベロベルトはキョロキョロと辺りを見回す。
「まさか逃げ出していたりしないよね……?」
 一抹の不安を覚えるベロベルト。が、それも束の間、
「まぁいいや、どうせすぐに分かるんだし!」
 異様なまでに膨れ上がった下腹部に視線を落とした彼は、意味深な笑みを浮かべるのだった。
 あとは帰るだけ。ベロベロと顔中を舐め回して洗面を済ませた彼は、一晩にしてボンレスハムと化した脚を床に突き立てる。
「よいしょ……っと!」
 脂肪の塊になっただけあって立つのも一苦労だった。掛け声と共に巨大な尻を持ち上げるベロベルト。二本の足で床を踏みしめると同時に感じたのは――
 ブウゥゥゥゥッッ!
 便意だった。周囲の空気を茶色く染めた彼は思わず吹き出してしまう。
「えへへっ、また出ちゃった! ……というワケで、まずは朝の儀式だね。せっかくだから借りちゃおうっと!」
 大自然の中でしか花を摘んだ経験がないだけに、テンション上がりまくりだった。嗅覚を頼りに目当ての個室を探し出し、意気揚々と扉を開けて中を覗き込んだ彼だったが――
「あっ……」
 期待は一瞬で裏切られる。パタリと扉を閉めて背中を預けた彼は笑わずにはいられない。
「……うん、無理! こんな可愛いらしいトイレじゃ、オイラのウンチは受け止められないよ!」
 大食漢の怪獣が使うには小さすぎた。彼は早々に諦めてしまうのだった。
 いつもどおり外で穴を掘って済ませるしかなかった。トボトボと玄関のドアに向かい始めるベロベルト。ふと思い出したのは床板を踏み抜いた時の記憶だった。
「うん? そういえば……」
 穴なら開けていた。ピタリと足を止めて方向転換した彼は、荒れ放題となった食堂に視線を向ける。
「よぉし、やってみよう!」
 そう言い終わる頃には瓦礫の山に分け入っていた。両手と長いベロを総動員した彼は、手当たり次第、そして舌当たり次第に邪魔な木片やらガラクタを掴んではポイポイと背後に放り投げていく。果たして汗びっしょりとなる頃には、用を足すのに丁度いい大きさの穴が口を開けるのだった。
「後はこれをこうして……と!」
 バラバラになった長机の太い脚を一本、そしてもう一本と穴の上に平行に渡して足場を組んだら出来上がり。ボットン便所の完成だった。
「……ふぅ! さぁて、気合い入れて踏ん張るぞぉ!」
 一汗かけば催すものだった。大蛇を召喚するべく魔法陣の真ん中に屈み込んだ彼は、スーッと鼻から大きく息を吸い込んで、そして――
「ふむぅっ……! んんっ、んんんっ……! んむむむむむむぅっ!」
 ありったけの力を括約筋に込めると同時に呪文を詠唱する。
 毛の一本に至るまで溶かし尽くされただけあって滑らかさは抜群。養分の搾りカスとなった丸太小屋の住民たちは――
 ブプッ! ブリブリミチチッ! ……ブニュゥゥゥゥッッ!
 さながらソフトクリームのようにベロベルトの尻穴からひり出され始め、穴底で蜷局を巻きながら堆く積み重なっていく。
「よぉし、このまま一家まとめて一本糞だ! ふんぬぅぅぅ……!」
 それを見て挑戦心を燃やした彼は、ギトギトの脂汗に塗れた尻に力を込め直す。この世で最も汚い音を轟かせながら格闘を続けること数十秒あまり。ガスを含む何もかもを絞り出し尽くした彼は――見事に六段巻きの大蛇を召喚することに成功するのだった。
「はぁぁ、スッキリぃぃ……! 気持ち良かったぁぁぁぁぁぁ……!」
 リーフィアの繊維質で宿便が一掃されたことも相まって爽快感は抜群。彼は堪らずベロリと舌を垂らす。
 傍らに落ちていたテーブルナプキンで尻を拭った後は待望の鑑賞タイムだった。腰を落とした姿勢のまま魔法陣から退いて自身の作品と対面するベロベルト。彼の口から歓声が上がる。
「わぉ! また記録更新だ! こりゃオイラ史上で最高に太くて、最高に長くて、そして何より……」
 ヒクヒクと鼻を動かした彼は親指の爪を鼻の穴に突っ込む。
「あははっ、最高に臭いウンチだ! まぁ、お肉の塊を何個も食べたんだから当然ちゃ当然だよね! 御馳走だって肉料理ばっかりだったし! ……うん! 形も綺麗なグルグル巻きで文句なし! これぞウンチの王様だ!」
 惚れ惚れした様子で批評を述べるベロベルト。そこで何かに気付いた彼は顎に手を当てる。
「ははぁーん、なるほどね。最後に食べた子がどんな具合でウンチになっていったかよく分かるよ。ゆっくりとベロ袋の中で溶かされて少しずつオイラの胃袋に送られていったんだ。ふぅ、逃げられずに済んで良かったぁ……」
 頭に近づくにつれて深緑色を増していく大蛇の体色からリーフィアの運命を察した彼は、ホッと胸をなで下ろすのだった。そこで彼は――猛烈な尿意に襲われる。
「んおっ、安心したらオシッコしたくなっちゃった。あーあ、もう少し眺めていたかったんだけどなぁ……」
 名残惜しそうに呟きながら腹部の分厚い贅肉をまくり上げるベロベルト。狙うは大蛇の鎌首だった。彼は股の裂け目の中から引っ張り出した雄の象徴を作品に突きつける。
「……悪いけど、君たちには溶けてなくなってもらうよ。オイラたちの森をボロボロにしてくれたんだ。これくらいの罰は受けてもらわないとね」
 大便にした程度では腹の虫が治まらなかった。冷酷に言い放った彼はグッと体の中心に力を込めていく。
「……っと、いけない! そうだった!」
 すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。マフォクシーの猟夫の話を思い出した彼はギリギリで発射を中断する。
「確か……お巡りさんが踏み込むかもしれないって話だったっけ。それなら君たちがどうなったか分かるようにしておかないとね。おまけに……」
 立ち上がった彼は辺りをぐるりと見回す。
「他にも悪い奴らはいるかもしれないんだ。ここがオイラの縄張りだってことを知らしめなくちゃ!」
 そのための準備は既に万端だった。回れ右をしてブラブラと歩き始めた彼は、我慢していた尿意を迷うことなく解放する。
「ふぅぅ……やっぱり生の獲物を食べた翌朝に出すのは格別だねぇ。なんたって勢いが違うよ」
 板張りの床に向かってジョボジョボと放尿しながら感想を漏らすベロベルト。食堂が終われば二階、お次は台所、その次は居間、最後は玄関だった。あちこちに足を運んでは、ホカホカと湯気立つ黄金色のシャワーを振りまいて回ること数分あまり。彼は小屋を丸ごと便所に変えてしまう。
「うん、完璧だね! あぁ、スッキリした!」
 これで文字どおり用済みだった。最後の一滴を玄関マットの上にポタリと垂らした彼は、元あった場所に雄の象徴を仕舞い、ガチャリとドアを開けて小屋を後にする。
「んんーっ! 良い天気だ!」
 今日も暑くなりそうだった。朝日の光を全身に浴びた彼は大きく伸びをする。
「さぁて、収穫の秋までの蓄えもできたことだし……早く帰ってのんびり過ごそうっと!」
 すっかり厚みを増した腹周りの贅肉を満足そうに舐めるなり、五体と尻尾を胴体に引っ込めてピンク色の大玉となるベロベルト。醜いまでに肥え太っても転がって移動するなら問題なし。前転を繰り返すうちに加速していき――あっという間に森の奥へと消えてしまうのだった。
 時は流れて数時間後。意外にも早く現場を訪れたのは、街の警察が偵察のために派遣したピジョンとオオスバメの二匹だった。どれだけ上空で旋回を続けても目立った動きが見えないを不審に思い、こっそりと天窓から侵入して一階に降りていった先で発見したのは――大きな、そして大きな産みたてホヤホヤの落とし物。その臭気と気持ち悪さのあまりに盛大に吐きまくった彼らは、捜査も早々に切り上げて、逃げるように飛び帰っていったのだった。
 結局、被疑者行方不明ということで処理され、警官隊の投入も見送られることになった丸太小屋は、山椒魚の怪獣に朝一番の濃い小便を掛けられた部分から順々に腐っていき、崩れ落ち、大便となった住民もろとも草木に呑み込まれて朽ち果て――やがて森の肥やしとなっていったのだった。
24/08/11 07:37更新 / こまいぬ
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