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連載小説
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きゅうしょに あたった!【下】
「……はっ!? しまった! 俺としたことが!」
 レントラーが水を汲みに行ってから三十分後。誰かに体を揺さぶられる感覚に目を見開いたフローゼルは大慌てで飛び起きる。前後左右を確認して気が付いたのは――どこにもレントラーとルガルガンの姿がないということだった。呆然と立ち尽くした彼の頬を一筋の汗が流れ落ちる。
「まっ、まさか……置いていかれた……?」
 どれくらい眠っていたかは分からなかったが、少なくとも約束の時間を過ぎてしまっていることだけは間違いなさそうだった。そこまで考えを巡らせた彼は、矢のような速さで近くの木の陰に滑り込む。
「なっ、なら……さっき体を揺すったのは誰だ? 俺達の他に誰かいる……!?」
 お腹の茶色い水滴模様に手を当てながら声を震わせるフローゼル。その答えは――直に明らかとなる。
 ガサガサッ!
 聞き間違いなどではなかった。ちょうど木陰の向こう側。背の高い茂みが揺れる音を耳にした彼は、姿勢を低くして身構える。
「誰だ!? 出てこい!」
 顔だけ出して叫ぶも反応なしだった。フローゼルはチッと舌打ちして立ち上がる。
「そうかい。……ならブッ殺すまでだ! 後悔すんじゃねぇぞ!?」
 腕のヒレを顎の高さで構え、両足で強く地面を蹴って突撃するフローゼル。音の発生源を両断するべく高々と腕を振り上げた次の瞬間――茂みの奥からニュッと長い舌が伸びてくる。
 ベロンッ!
「あっ」
 その先にあったのはフローゼルの玉袋。急所を一舐めされた彼の脳内に荘厳な鐘の音が響き渡る。
「おっ……おぉっ、おふっ……!」
 手を上げていられたのはそこまで。ビリビリと痺れる感覚に局部を押さえて内股になってしまうフローゼル。我慢しきれずにガックリと膝をついた直後に茂みの中から飛び出してきたのは――大きな赤いリボンを尻尾に巻いた雌のベロベルトだった。
 彼女は何者か。話は数ヵ月前に遡る。
24/08/11 08:04更新 / こまいぬ
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