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【保】夏のある日 − 旧・小説投稿所A

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【保】夏のある日

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アレイが少女と出会ってから、二週間が経った。
あれ以来、少女が来ることは無くなった。

「あの子、どうしたんですかね〜」

アレイは森で寝そべりながら、一人小言を言った。

「・・・少し街の方へ行ってみるですか」

アレイは、また竜人の姿になって、街へ向かった。
街は、いつもと同じように騒がしい。

「あの子の家はどこでしょうかねぇ」

アレイがきょろきょろしながら一人言うと、
喫茶店のほうに目を向けた。

「あっ!」

アレイが見た先にいたのは、あの少女だった。
どこか綺麗な格好をして、喫茶店の中にいた。
アレイは、喫茶店のほうへ向かった。
そして、喫茶店の側まで来ると、歩くのを止め、
少女の方へ注目した。
アレイは、見た目は人でも、聴力、視力が
竜のときと同じのため、
壁一枚向こうの会話も聞き取れるのであった。

「さて、少し覗いてみるですか」

アレイは喫茶店の壁に寄りかかり、中の様子を伺った。
もう一人誰か居るようだった。

「ねえ、私と別れてくれない?」
「おい、何だよその言い草は!」
「私、ほかに好きな人ができたの」
「誰だ!そいつの名前を言ってみろ!」

口論になっているようだった。
そしてその会話も全てアレイに聞こえていたのだった。

「名前は知らないけど・・・その人は・・・」
「そいつは!?そいつはどんな奴なんだ!」
「竜よ」
「・・・は!?」
「私は竜に恋をしたの」
「っ!お前正気か!?竜に恋をするなんて!」

アレイはこの会話を聞いて、少し嬉しくなっていた。
なぜなら今まで誰にも好かれたことの無い自分が、
初めて愛されたからだ。

「だからあなたとは別れるは」

そういうと彼女は席から立ち上がり、
喫茶店から出てきた。
アレイと彼女がすれ違うとき、アレイは、

「ありがとう」

と誰にも聞こえないくらい小さな声で言ったのだった。

そして、その後数時間後、アレイが森に戻り、
また寝そべっていると、彼女がやってきた。

「また来たですか」
「・・・うん」
「今日、彼と別れてきたの」

彼女がアレイに近づきながら言った。
そして、アレイは彼女を尻尾で優しく包み込んだ。

「その事、僕はみんな知ってるです」
「え?」
「僕、君とその人が話しているところ、見てたです」

アレイは、少女の顔を舐めながら言った。

「竜さんには何でもお見通しなのね」

少女は笑いながら、アレイを撫でた。
そして、数時間アレイと話し続けた。
楽しいこと、悲しいこと、
みんな彼女は話した。
そして、日が暮れる頃、

「また今度も来て下さいね♪」
「うん!」

と言ってアレイは少女と別れた。
この先悲しい運命は待ち受けているのを知らずに。




NextStep・・・

※第二話です、はい。今回は捕食表現は無いですが
次回は少しきつめ・・・なのかな?
<2011/06/03 21:30 伶>
消しゴム
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