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【保】易すぎる依頼 − 旧・小説投稿所A
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【保】易すぎる依頼

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「……ん‥んぅ…朝、か…」

何だかんだで寝たらぐっすりと不安なんて感じないくらいに熟睡してたようだ。
そう言うものの…やっぱり何か目覚めが悪いと言うのだろうか。心の中のモヤモヤみたいなのが取り除けてないから、複雑な目覚めだった。
とりあえず目覚めが悪かろうと顔洗ってサッパリとしてくるとしよう…。







「さーて、飯も済ませて歯磨いて、服もキッチリ整えて、心の整理もつけて酒場に来てみたってわけだが…」

起きてから1時間ぐらいで酒場に来ていた。どうせ暇だから朝一で開店時間から行くか、と思って来たのに…さぁ。

「今日も休みってのは、どう解釈すれば自分の中で満足したものになるんだろうな…」

苦笑しながら昨日と同じ扉に貼ってある張り紙を見てる。
理由がないにしろ、連日はないんじゃないかなーって思って来たらこれだよ。
せめて理由ぐらいは書いてくれないと、心配だけじゃなくて、なんて言うか…ああもう!ゴチャゴチャしたのは嫌いなんだよ。
それはそうと、酒場が開いてないってなると相談が出来ないな…。
とりあえず…と相談相手がいないので懐から財布を取り出し中を見て代わりに相談。
見る限りは明日まで保つってとこか。逆に言えば明日も…なんてことになってたら、相談なんて余地はないわけだ。

「…迷う余地は、明日まで…か。今日は昨日買えなかったものでも買いに行くか」

半ば自分自身を言い聞かせ、誤魔化すように言いながら歩きだす。
買い物して、適当に時間潰して、明日に持ち越し…そんな感じかな。






「随分時間食ったな…もう夜か。買い物してちょっと寄り道しながらぶらついてたらこんな時間になるなんてな」

と言っても、ゲーセンで立ち見してたのがほとんどだが…。
金使えない時に外でブラブラする時の有効な手段として、ゲーセンで他の奴のプレイを見て勝手に楽しむってのがある。結構いいもんだぜ。
今は帰るついでに寄り道で酒場に寄って来てみたところだ。開いてないとは思うが一応…としてな。
案の定開いてないわけだからこのまま帰るか…。

「…なぁおい、最近噂になってるあの話知ってるか?」

「ん……?」

帰ろうと歩みを進めようとした時に、酒場の近くにある空き地で数人の賞金稼ぎ、らしき奴らが屯(たむろ)している。
ちょっと気になってみたが、多分噂ってのは賞金稼ぎが消えてるとかって話だろうからさっさと帰るか。

「噂って、あの賞金稼ぎが云々の話か?」

「違うよ。洞窟の話だ、洞窟」

「……洞窟…?」

予想してたものと違う単語が耳に入ってきて、進みだした歩みはすぐに止まる。

「なんだよ洞窟って。そんなのいっぱいあるだろ」

「いや実はな…ここだけの話、面白い洞窟があるって最近噂になってるんだよ」

「面白い洞窟?洞窟に面白いもつまらないもあるかよ」

「それがさ、その噂になってる洞窟はどうも普通の洞窟とは違うって話だ」

「どう違うってんだ?」

「確かに気になるな…」

いつの間にか足は空き地の近くへ動き、姿を見られずに話が聞ける場所にまで来てた。
何だかんだで俺も人だ。噂ってのは気になるもんなんだよ。

「なんでも、人の手が加わってないのにも関わらず、あたかも誰かが踏み入って手を施したようなほどに綺麗な洞窟なんだってよ」

「そんなのどこにでもあるだろ。自然の関係で人口のものより綺麗なものが出来るってのはテレビでもよくやってるぜ」

「いやそうじゃなくてさ、人じゃ作れないようなものまであるのは当然だけど、誰かがそこに入って何かやらかした、とかってのもないらしいんだ」

「んでそれが?」

「ここまで聞いて感じねぇか?ロマンってのをよ!」

「……お前のそういう話、聞き飽きたんだよ。今日は帰るぞ」

「あ、ちょっと待て!もう一つその洞窟には話があってな、噂だから真偽は知らないけど、めちゃくちゃ寒いらしいぞ」

「あーそうですか。んじゃ暖かくなるように炎魔法でもぶっかけてやるか」

「ちょ、ちょっと待て!噂話をしただけだろうが!マジ待てって!」




「…興味はあったものの、最後の方は騒がしいだけだったな」

がっかり感を抱えながら空き地を離れ、帰路を歩いてる。
しかし心の中じゃ気になってるっちゃ気になってる。あの洞窟の話。

「この時期にそういう話が出るのも変な感じするけど…出るもんなのかもな。だとしても、何か関わりあるような気がするような…考えすぎかな」

あの賞金稼ぎの話もあってか、どうも結びつきがあるんじゃないかと考えてしまう。
考えすぎなんだろうなとは思ってるが、タイミングが良すぎるって言うか…依頼も、あるんだよな。
よく考えればだけど…あいつの依頼も洞窟にある花をって内容だった。それも考えすぎかもしれないが…。

「…やっぱり、明日だな…。自分一人でどうこう考えても結論なんて出やしない。こういう時こそ思いきってぶちまけてみるもんだ」

これ以上考えると頭が疲れるから、一旦その考え全部しまい込んでおこう。
明日マスターに話してみれば案外スッキリするかもしれない。開いていれば…の話だが。
まぁそんなマイナス思考でいても無駄だし、気楽にしていこうか。









「それじゃ、依頼内容を詳しく説明するね」

「あぁ、頼むぜ…」

結論から話そう。予想通り開いてなかった。昨日、一昨日と同じだ。
ということで有無を言わず依頼を受けることとなった。これ以上は引っ張れないからな。

「えっと…あった。この花だよ」

そう言って出してきたのは一枚の写真。そこには依頼の対象となってる花が写ってる。
見る限りはいたって普通の綺麗な花。毒々しいとか神々しいとかってわけでもなく、ごく普通の花としか言えない。
どうあれ依頼は依頼。受けたものはちゃんと完遂するのが礼儀。

「この花を採ってくればいいんだな。じゃあ今日のうちから向かうか」

「場所は地図に書くからちょっと待ってね」

話によれば場所は町から少し離れた洞窟。町の外には少なからずモンスターがいるから、力がない奴は出ないのが普通。
だから詳しい位置まではわからない、とのことで地図に大体の位置を書いてもらう。まぁ行けばわかるさ。
洞窟なんてそんなにあるもんじゃないから行ってある程度探索すれば見つかるもんだ。

「場所はこの辺だよ。あと、何か必要なものは…」

「これで十分だ。あとは現地で確認して動くから」

余計なもの持ち込んでも邪魔になるだけだからな。対象、場所、それだけあれば後は見て動く。
実際事前の情報があてにならないことなんて頻繁にある。大事なのは今起こってる状況を把握すること、だから。
あとは準備して現地に向かうとしよう。今日のうちに終わらせて少しでも財布の中温めたいし…。






<2011/07/06 22:45 ヴェラル>消しゴム
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