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【保】誰という姿 − 旧・小説投稿所A

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【保】誰という姿

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地平線の果てまで続く澄み切った蒼天の空。
小さな窓に切り取られた風景。
「はぁ・・・」
頬杖を突いてそれを僕はただ見つめていた。
座席に座りすぎて、体の節々が痛い。
シートベルトを外し、背を伸ばし・・・

ーガクンッ!ー

機体が大きく揺れ、緊急用具が上から降ってくる。
「えっ・・・そんな・・」
飛行機・・空中でのトラブルが発生してしまったのだ。
機体の自由を失い、落下を始める。
「うわあああぁぁぁぁぁ!」
それを確認した時には体は宙に浮いていた。

 * * * 

「ぅぅん・・・痛っ・・・」
意識が深淵の闇から僕に帰ってきた。
全身に激痛が走り、体は動かせない。
が、四肢の感覚は生きている。
手が動けば、足も動く。
でも、少し短い気が・・
と、不意に目を開けて見れば・・
「・・・え・・」
絶句した。僕の体は自分では無くなっていた。
黄色の体、白のような水色、青色の縞模様の毛皮を被っている・・
そうだ・・この姿は・・・
ずっと、架空のモノだと思っていたのに。
「・・ガ、ガブモン・・」
そう・・この無人島で僕はガブモンに変身していたのだった。

 * * * 

暫くすると歩く事は出来た。
が、体は非常にだるく、炎を吐くことも出来ない。
波に晒される体を引き起こし、砂浜を歩いていた。
「おい。そこの貴様。」
「あ・・」
声と共に、すぐ頭上を影が覆い、僕は疲弊した声を上げ、それを見上げた。
「私はガルゾォス・イベンガ・アインツァー。
ガイアと言う。」
僕は少し気が楽になった気がした。
デジモンになってしまったのは僕だけではないようだ。
目の前にガイアと名乗る、エアロブイドラモンがいるからだ。
「貴様は・・・誰だ?」
何を今更、名乗る必要もないだろうとして、頭を記憶を疑った。
僕は・・誰?

   ーガブモンー

うん・・そう・・なの?
ううん。ちがう。僕はガブモンじゃない?
あれ?僕は?
「フフッ・・・頭を抱える事じゃないだろ?自分で分かっているのだろう?」

   ーガブモンー

と、声をあげてそう言おうとして慌てて口を噤んだ。
違う違う違う違う! 僕はガブモンじゃない!
だけど何だったっけ?どうしても思い出せない。
「え・・あ・・そ、その・・」
「どうした?“ガブモン”?デジモンである貴様が他者とでも?」
「ぅ・・あ・・えっと・・」
「フン・・強情な奴め・・・」
デジモンではない。と言う記憶に引っかかる何かが、僕を頷かせなかった。
ガブモンではない。でも、元の姿が分からない。
「あ・・え・・う、うわああぁぁ!?」
体が軽い・・と思った瞬間、僕の体は海の上にあった。
バシャン!バシャッ・・バシャッ・・
そのまま海に落下。氷のような海水が体を刺す。
「あぷっ!わっ・・た、助っ・・助けてっ!」
「助けて欲しいのか?」
いきなり海に落とされ狼狽える僕を見て、明らかに口元に笑みを浮かべているあいつ。
「あっ・・っがはっ!た、助けてよぉっ!」
「そうだな・・貴様はガブモンだと言うことを受け入れるか?」
「何を・・わぷっ!?」
足に激痛。海水が瞬く間に体に流れ込み呼吸不可。
視界は真っ青で赤黒い液体が目前を流れていく。
三秒もしない内に気を失った。

 * * * 

この島はどうかしてる。
どこへ行ってもデジモンばかり。全員、凶暴の極み。
出会うなり、餌でも見つけたかのように襲いかかってくる
あの時、ガイアに助けて貰わなければシードラモンにきっと食い殺されていたに違いない。
現に今、グレイモンの追跡を振り切ったところだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・」
息を切らせながらあそことは別の砂浜を歩いていた。
お腹・・減ったし・・もう・・ダメ・・
その砂浜のど真ん中で遂に体が限界を迎えた。
こんな所で寝てたら喰われる。
そんな事分かっている。でも、もう限界。
目の前からガルルモンが来てるし・・
「あら、ぼうや。そんな所で寝てると食べられちゃうよ?」
「あ・・・・・ぅ・・・」
「フフッ・・・美味しそう。」
こいつもそうだ。あいつみたいに僕を見て舌舐めずりして笑みを浮かべる。



<2011/11/25 21:35 セイル>消しゴム
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