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【保】神々の戯れ〜散々な海外旅行〜 − 旧・小説投稿所A

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【保】神々の戯れ〜散々な海外旅行〜

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月夜兎の一撃により、フェンリルの水神を拘束する力が一瞬抜けた。
水神はその隙になんとか逃げ出す。

「あっ、クソ……!」

フェンリルは慌てて再び水神を取り押さえようとするが、その間に月夜兎が割って入った。
月夜兎は完全に元の姿となっていて、服も白っぽい狩衣のようなものなっている。
そしてその手には月夜兎愛用の御神刀が握られていた。

「ほう、貴様から死ぬか?」

フェンリルは水神に対してしたものよりも怖い顔で月夜兎を睨み付ける。
だが月夜兎はそれに対して不敵な笑みを浮かべた。

「悪いな。私には絶対『負けは無いんだ』。まあなんたって不死身だからな」

「不死身?ほう、そりゃいたぶりがいがあっていいなぁ!」

「まあぶっちゃけ私はアンタには勝てないだろう。だがさっきも言ったように負けもない。この勝負はいくら戦おうがおそらく引き分けだ。私はそれでも困らないが、アンタは困るんじゃないのか?『あのフェンリルが日本から来たよく分からん兎モドキに引き分けに持ち込まれた』だなんて。ましてや今のアンタは手負いの状態でいつも通りのパフォーマンスは発揮出来ない状況なんだ」

言いたいことは分かるよなぁ、といった顔で月夜兎はフェンリルを見つめる。

「……それは脅しか?」

「イヤだなぁ、人聞きの悪い。お互いにとって最善のやり方で解決しましょ、ってことですよ」

水神は非常に驚いていた。
あのフェンリル相手に主導権を握りながら交渉を進めるだなんて。
ていうか月夜兎って力ずくだけじゃなくて話し合いも出来るんだ、などと水神は思った。



「お互いにとっての最善のやり方とやらを聞かせてもらおうか」

フェンリルは吐き捨てるように言った。
どうやらフェンリルは今自分が置かれている状況が不利であることを悟ったようだった。

「なあに、簡単なやり方だよ。アンタは黙って我々を見逃してくれたらそれでいい。そうすりゃ何もなかったことになるからな」

「なるほど、つまり今日のことはなかったことにしようということだな。……分かった、そうしようじゃないか。そうと決まればさっさと失せてくれ。ったく、厄介なもんを食っちまった」

「後ろから襲うなんて卑怯な真似はするなよ。水神、とっととずらかるぞ」

「う、うん」

水神は月夜兎を背に乗せると、一目散に飛び立った。

「……いやぁ、月夜兎のこと本当に見直したよ!まさかあのフェンリルにからまれて生きて帰れるだなんて。私ぶっちゃけあきらめてたよ」

「私だってやるときはやるさ」

「うん!フェンリル相手に交渉する姿は本当にかっこ良くて−−、あれ?」

ふと水神の脳裏にある疑問が浮かんだ。

「どうして月夜兎はフェンリルに呑まれた後すぐに通り抜けの術で脱出しなかったの?だってさっきは私に対して適用出来ないから使えなかったのであって、月夜兎自身には術は適用出来たんでしょ?」

「えっ、あっ、それはだな……」

月夜兎は急に口ごもった。



<2011/12/05 23:13 とんこつ>消しゴム
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