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SPEC−甲〜召の回− − 旧・小説投稿所A

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SPEC−甲〜召の回−

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豪華な料理が、厨房からパーティー会場へ順調に運び込まれていく。ビルの周辺では海外から呼び寄せた警備のプロフェッショナルが目を光らせており、五木谷も、屈強な外国人ボディガードに警護されるという、万全の態勢をとっている。

さらに野々村たちが検知器を毒味控え室に持ち込み、技師を同行させていた。
「これが、ガガガ・・・・・・ガ、ガスクロマトグラフィーでして、万が一、五木谷さんが何かを口にされるときは、これで確認して頂けば安全です」
野々村は、この検知器の名前を噛まずに言えたことがない。

「ふむ。これで冷泉の予言は回避されそうだな」
五木谷は満足そうだ。だがここで当麻が口を挟む。
「どうですかね。あの予言の能力は本物みたいですからね」

「というとあの予言...」
野々村がハッとし、当麻を見る。

「当たってたんです。恐ろしいぐらいに」

「マジ?」

「瀬文さんは予言を破棄してしまったので何とも言えませんが、とにかく、あたしのは」
大当たりというように頷く。

「だから当たると言っているんですよ。元々無職でフラフラしていたあいつを有名にしてやったのは私ですよ。それを、昨日は何度も電話したのに、電話にもでないんですよ」
文句たらたらの五木谷に、野々村が口ごもりつつ、
「あのう、今、警察で身柄を拘束しているんです」

「何だと!俺に断りもなく」

「ひー」

「冷泉があなたを殺す可能性もあります。なので念のため」
瀬文が補足すると、五木谷は態度をコロッと態度を変えた。
「なるほど、さすがだ」

「心当たりあるんですか」
当麻が聞いてみると、

「近頃、細かいとこまで指図するようにになって、ムカついていたんですよ。旅一つ行くにも、今は時期が悪いだの何だの。どこまで人の人生をコントロールする気か、って信者の前で怒鳴ったこともありましたからね」

「先生、ともかく安心を。料理も酒も事前にチェックしたものですし、何かあれば、この...」
脇が検知器の方を見ると、野々村が続ける。
「ガガガ・・・・・・ガ、ガスクロマトグラフィーです。毒物は見逃しません」

「よろしくお願いします」

そのとき、係員が開場を知らせにきた。

続々と到着する招待客にウエルカムシャンパンが配られていた。

「お忙しいところ、ありがとうございます」
会場の入り口では、丁寧に脇が客を迎えていた。

「いやあ、君が是非と言うから。五木谷君は君で持っているようなもんだからな」

「とんでもございません」
謙虚に頭を下げる。一区切りついたところで、脇は五木谷の様子を窺いにいった。
「大丈夫ですか?」

「当たり前だ。まさか、予言が当たるとは思ってねえよ」

「管(くだ)幹事長、入場しました」
瀬文が襟につけたマイクで警備軍に報告した。警備軍に緊張が走る。今日の招待客の中で、一番の大物である。

「予定通りか」
野々村は時計を確認して言った。管幹事長の滞在時間は20分。

「ところが、予定外の手土産が」

「ええ?」

入り口で脇と五木谷そろって幹事長をむかえている。
「幹事長、お忙しいところをありがとうございます」

「次の選挙には、ぜひとも五木谷君に議席を確保して貰いたくてね。縁起ものの勝ち酒だ」

「!」

幹事長秘書の上野(うえの)たちが『御勝岳』と書いてある樽酒を運んできた。

「そ、それは、ちょっと、マズイな...」
当麻が呟いたとき、野々村が、ガスクロマトグラフィーの技師を連れてすっとんできた。
「しばらく、しばらくお待ちを。私、、警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係の野々村と申します。そのお酒、調べさせて頂いても...」

「何?」
幹事長の顔色が変わる。周囲の客たちもざわついている。

「お耳拝借」
野々村が耳打ちすると、温厚で知られる幹事長が怒気をあらわにして怒鳴った。
「君は、私の故郷の酒に毒が入っているとでも言うのか。バカバカしい。私が毒味する!!」
そう言うと、杯を勢いよく持ち上げた。何かあったら、それこそ日本中を巻き込む一大事である。

「いえ、私が...」
脇が慌てて幹事長の手から杯を受け取った。

「さすが秘書の鑑」
当麻が感心して見ていると、脇の周囲に賞賛が集まる一方で、野々村にチラ、チラと非難の目が向けられている。

「いや、不肖・野々村が、頂戴致します」
野々村が弱弱しく言って、脇から杯を受け取った。

「ほ、ほんとに、いいんですか?」
老い先短いとはいえ、当麻にとっては上司である。

「君にそう言われると、何だけど...これも、未詳の仕事だから」
当麻は手をあわせて野々村を拝んだ。その間も、瀬文は周囲に警戒の目を光らせている。野々村が手にした杯の中に、雅ちゃんの顔が浮かぶ。昔のセーラー服も食べちゃいたいくらい可愛かったけど、警察官の制服姿も、可愛かった......。
「雅ちゃん...」
断ち切るように、グイ、と一気に杯を飲み干す。
「・・・・・・う!」

「!!」
会場中の人間が固唾を呑んで見守る中、野々村が呻くように言った。
「・・・・・・うまい!、あの、おかわりを...」

「死ぬかと思った...」
当麻はホッと息をついた。

場の緊張が解け、上野秘書や脇たちが、あちこちで勝ち酒を注ぎ始めた。その間、瀬文たち未詳の面々が鋭く視線を走らせる。
皆に酒が行き渡ると、幹事長が壇上に立った。
「それでは、我が党の未来と、五木谷君の活躍を祈願致しまして、乾杯!!」

「乾杯!」
五木谷と幹事長が上機嫌で杯を飲み干し、客も皆、勝ち酒に口をつけた。盛大な拍手が湧く。

次の瞬間、異変は起こった。

「!」

壇上の五木谷が突然、苦悶の表情を浮かべて倒れ、会場が一瞬固まり、誰かの悲鳴が上がる。
鬼の形相で胸をかきむしったかと思うと、一瞬の間に五木谷は絶命した。

「先生!!」
五木谷のすぐ後ろに控えていた脇が、真っ青な顔で体に取りすがった。

「よ、予言が当たった」
当麻の驚くまいことか。

「当たっちゃった...」
心臓が痛いんだか胃が痛いんだか、野々村は胸を押さえて呆然と突っ立っている。

瀬文はすぐ我に返った。
「救急車!」
その後の行動はさすがに速かった。右往左往している外国人部隊に英語で怒鳴る

「俺の指示に従え!!」

そうこうする間に遠巻きに見ていた人々が、五木谷の周りに群がってきた。

「そのまま!動かないで下さい!現状保持の為、会場を封鎖します!皆さん、我々の指示に従って下さい」
SIT時代に培った統率力で、瀬文は正攻法の捜査を仕切りはじめた。いつの間にか、他の警備陣も瀬文をリーダーと仰いでいる。
「係長、捜査一課に連絡を。全員の事情聴取と所持品検査!」

「ハイ」
野々村が慌てて携帯を取り出す。

当麻は、五木谷の遺体のそばにいた。皆が同じ酒に口をつけたはず。毒を混入する隙はない。
「・・・・・・なぜ?...」
考えても、考えても、真相は見えてこない。


<2012/04/24 23:57 mt>消しゴム
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