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暗翳の空 解き放たれし竜 − 旧・小説投稿所A
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暗翳の空 解き放たれし竜
− 図書館にて −
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夏ももう過ぎていくようで、最近夜に涼しい風が吹くようになった。
だが、ここは盆地の為に昼はまだまだ暑い。
熱しやすく、冷めやすい…
盆地というのは人間と同じで、そういうものなのだ。


とある大陸の中央付近に、四方を緑の山に囲まれた、ベーシンロー王国という国がある。
東に2つの山地、南と西に連なった山脈、北に緩やかな丘のような山がある。
東の2つの山の間が、他の国とベーシンロー王国との唯一の出入り口となっている。

北の山を越えたその先には、よく貿易を行っているエストロ王国がある。
だが、ある噂があり、エストロ王国へ北の山を経由して越える者はいない。


ベーシンロー王国の中心地から少し離れた所にある、古びた木造の図書館。
高い棚が立ち並び、その棚に古い本が所せましと並んでいる、少し埃っぽい空間。
だが、そのようなところは嫌いではない。
この図書館は、もともと利用客が少なかったのだが、インターネットの普及がさらに後押しして、今では利用客は1日数人程度しか居なくなってしまった。
随分廃れてしまったものだ。
人間というものは楽なものを選びたがるものだ。
そして、古いものは捨て、新しいものに変わっていく、それがこの人間の世界の風潮である。


最近では一人になる時間が増えた。
昔、本を読んでくれたおじいちゃん、いつも話しかけてくれたおばあちゃん、
…誰でも、死というものはあっけないものだ。
そうして、気づけば他に誰もいない。

図書館の窓は建て付けが悪いのか、ガタガタと音を立てて揺れていた。
沈黙の中の唯一の装飾音だった。




―――竜は森の真ん中にある湖に住まう

これがつい最近見つけた、ある歴史書の一部分だ。
図書館の中で一番古くて大きな本が、この歴史書だ。

…そう、これが噂の元凶だ。
“森に入った者は、生きて帰ってくることはできない”
この本を使って言い伝えられていたのだろうか…、それとも言い伝えから作られた本なのか…、
本当の事は分からない。


―――竜はあまりに巨大で、人間では歯が立たないほど強い

ついでに大きく挿絵もついているようだが、古くてほとんど見ることができない。
その竜の躯体は紫色であることぐらいしか読み取ることはできなかった。


他にも興味深い内容があった。

―――竜の爪には、他の生き物を竜に変えるという恐ろしい作用もある
―――昔、竜を呪いにかけたと嘘をついて以来、この町に来ることは無い

などが書かれている。
かなりリアルに描写されていたところが妙に気になった。


これらの記述が嘘か真かは分からない。
現実に竜が生きているなど、考えたこともなかった。
というより、そのような奇抜な考えは思い浮かばなかった。



だけど、本当に、

…本当に、これらの記述が正しければ………







図書館に、橙色の夕陽が差し込んでいた。

その大きな本は、ゆっくりと閉じられた。






僕(長引)→どんぐりさん→僕→どんぐりさん→…
の順に書いていきます!

訂正
登場人物のイスト、北の山を越えた先のイストロ王国
この二つがややこしいので、イストロ→エストロにしました

今更ですがw(10/10)
<2012/10/06 00:40 長引×どんぐり>
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