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闇夜の黒狼 満月の章
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黒狼の口内。それは一度体験した。
ねっとりした高粘性の生暖かく、生臭い唾液が真下に溜まり、上からはゆっくり、降ってくる。
蒸し暑く、生臭い臭いが漂う最悪の空間。
餌食となった者を胃袋に流し込む直前の拷問部屋。
獲物をさらに苦しめ、味わう空間。
食い殺すことも出来る、凶悪な肉の檻。
一度閉じこめられてしまえば逃げられない。
食われるのみ。飲み込まれるのみ。
グチャアッ・・・ヌチュッ・・ヌチャァッ・・
粘っこい水音を立て、上顎と下顎との間に無数の糸を引いて、舌、口が動き出した。
(ぼ、僕は・・どうなるんだろうか・・)
ニチュッ・・ググググッ・・・
舌が持ち上がり、上顎に押しつけられる。
さらなる味を欲しがる黒狼はグリグリと小さく舌先を左右に動かしながら上顎に少年を押しつけて、味わう。
「ぅぅ・・あぁっ!」
もう疲れきった体なのに声は上がる。信じられない程に。
クチュッ・・ニチュゥ・・
今度は下顎と舌の間に寝かされた。そしてその上から・・
「!?んっ・・んん〜〜!」
舌に押しつけられる。粘膜と唾液の混ざる肉に顔が埋まり呼吸が出来ない。
かろうじて動く両手で舌を叩く。
「んんっ!!・・んん〜〜〜!!」
しかし、舌は動かない。息ができない。
息が・・・く、くるし・・・い・・
グニュッ・・
「!はぁっ!!」
酸欠の直前に舌が動いた。
顔を上げ、空気を貪った。
空に近い肺に生暖かく、生臭い、黒狼の吐息を取り込む。
「んごっ・・げほぁっ・・ごほっ・・」
当然のことながら、噎せた。
グチュグチュッ・・・シュルルルッ
一息つく暇なく舌が体に巻き付いた。
自由を奪われ、口内に入る僅かな光で行き先が照らされた
・・・牙だ・・牙がある・・・
シュルルルルル・・・グニィ・・アグアグッ・・
その牙で優しく舌が解かれ、牙の上に乗せられた。
考えがまとまる前に牙は動き、体を襲った。
「あがっ・・・んんっ・・・」
あの鋭い牙で甘噛みにされていた。
皮膚を食い破らない程度の力で体に牙は食い込んで来る。
何とも言えなかった。・・痛気持ちいい?
グニィ・・アグッ・・アグアグ・・ゴクン・・
甘噛み。場所を変えられては甘噛み。
繰り返される甘噛み。少年の体は噛み跡ばかり。
しかし、体は常に唾液に晒されていた。降ってくる唾液を飲み込み、直に浴び、噛まれない部分は下顎に溜まったドロドロの唾液に浸っていた。
時折、溜まりすぎた唾液を黒狼は飲み込む。
トンッ・・・ズルッ・・ズルッ・・・
ヒョイッ・・っと唐突に舌の上に戻されると舌に傾斜が付いていく。やっと丸呑みにしてくれるようだ。
舌も少年も唾液に包まれ、摩擦は存在しない。
いとも簡単に喉に滑り落ちていく。
ズルッ・・ゴクリ・・・ゴクリッ・・・
足が食道まで飲み込まれると喉の筋肉が蠕動し、体を一気に引き込んだ。
(あぁ・・・やっと・・楽に・・)
ングッ・・ゴパッ・・
「!?」
ところが、少量の黒狼の体液と共に少し吐き出された。
そして、また喉、食道に滑り落ちていく。
そんな・・・まさか・・・・
少年の予想は見事に的中した。
喉に滑り落とし、喉の蠕動で引き込むと少し吐き出す。
何度も飲み込む快感を味わおうとしているのだった。
「あぁ・・も、もう止めてょぅ・・・」
呑まれ、吐き出され、また呑まれては、吐き出される。
それが何十回と続いた頃・・・・
「・・声一つだせぬほどお疲れのようじゃのぅ?ならば、そろそろ、胃袋の中に入って、休んでもらうとするかの。」
またもや器用に喋ると一気に舌が垂直になった。
やっと呑み込んで貰えるようだ・・・・
ズルッ・・・・ズル
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