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【保】イーブイの章1 小さな生け贄
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の子に何かお礼をしたかった……
でも、彼は何もあげる物がなかった……だから、今の彼に出来ることをする。
ペロ……
女の子の体によじ登り……
頬に残っている涙が流れた後を小さな舌で優しく舐めた。
「きゃっ! くすっぐたい。 んも〜」
「あっ……ごめんなさい。 でも、僕には……こんな事しか出来ないから。」
「いいのよ。 ……ありがとう、嬉しいわ。」
シュンとしょげかえった彼の様子に慌てて元気づける女の子。
お返しとばかりに彼のフワフワとした毛皮の生えた首筋を優しく撫でると、
それがとっても気持ちよいのか、彼はふわ〜と欠伸をしてウトウトしだした。
キュルルルル!
再び彼のお腹が可愛く音をたてた。
あの時以上にボッと顔が赤くなっていくのを感じて、キュウっと体を縮めて小さくなる。
そんな彼を見て女の子は……クスッと含み笑いをした。
「ふふふ、お腹が空いていたのね。 はい、これあげる。」
「いいの……ありがとうお姉ちゃん……」
何処に閉まっていたのか、木の実を取り出して彼に差し出す。
受け取った木の実と女の子をすまなさそうに交互に見て、一言お礼を言った後……
カプッと小さな口で、ちょっと大きめな木の実を囓った。
口に含んだ果肉から甘酸っぱい味が口いっぱいに広がっていく。
「おいしい。 ……これ美味しいよ。」
「そう。 気に入ってくれて嬉しいわ。」
笑顔で微笑む女の子にお礼を言うのも忘れて、彼は夢中で木の実を食べる。
シャクシャクと一生懸命に木の実を食べている彼を楽しそうに見つめる女の子。
「ご馳走様……ふわー……なんだかもう……眠い……」
「いいのよ……お休みなさい。 ……ねぇ、私達……もう友達だよね?」
眠そうに欠伸をして彼は女の子の腕の中でうずくまり、
……眠そうに目をショボショボさせる。
そんな彼に微笑んで……でも、どこか寂しそうな表情で問いかける。
「……うん。 当たり前……だよ。 お姉……ちゃ……」
「……ありがとう。 私……君のこと大好きだよ。」
今にも閉じてしまいそうになっている彼の目に写る女の子の表情は
……今日の中で一番嬉しそうだった。
そして、自分も女の子に微笑み返して、再び眠りの世界に旅立っていった。
気持ちよく眠っているのを起こさないように彼を毛布の上に下ろす。
それから、懐から赤い輪っかを取り出して眠っている彼のそばに並べた。
「気に入ってくれるかな? 私のプレゼント……」
喜ぶ彼の姿を想像して、女の子は少し照れたように笑みを浮かべる。
……その時、女の子の家の戸口がドンドンと大きな音を立てながら叩かれた。
ハッと不安そうに顔を上げる女の子……眠っている彼を見下ろし……
「絶対……私が守るから。」
女の子の言葉の真意はいったい……
そして、時が過ぎていった。
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←<2011/06/08 20:55 F>
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