[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
【保】イーブイの章1 小さな生け贄
01 02
03 04
あれからどれだけの時間がたったのだろうか……
真夜中の世界の中……ある渓谷に大きな洞窟が開いていた。
その洞窟の入り口に彼はいた。
あれからずっとスースーと可愛い寝息を立てて眠っている。
ときおり『ふにゃっ』とこれまた可愛い寝言を呟いていたり……
イーブイ
それが彼の……この愛らしく小さな生き物の名前だった。
なぜ、こんなところで眠っているのだろうか?
それは、イーブイ自身は預かりの知らないところで決められた事に理由があった。
その理由とは……生け贄……
……洞窟の真っ暗な入り口の奥から音が聞こえてきた。
ドシドシドシ
足音……それもかなりの音を立てている以上、
その足音をたてている持ち主はかなりの巨体の持ち主のようだ。
「……スゥー……ムニャ、ウ〜ン」
これだけ大きな音が響いてきているのに起きる気配を見せないイーブイ。
鈍感を通り越して、剛胆と賞するべきか……
いずれにせよ、彼は逃げる機会を失うことになった。
ついに、それが洞窟から姿をあらわした。
神話に出てくるライオンとワシを組み合わせたグリフォンの様な姿……
顔の額に不思議な紋章が描かれていて、口が嘴があるように尖っているが、
口の中に無数の牙が生えていることからそうでないことが分かる。
その巨体を揺るがして、イーブイのそばまでやってきた。
そして、生け贄に捧げられたイーブイを見ると……憤慨する。
「人間どもめこんなに小さな者を献げおって!!
こんな者では、腹の足しにもならんは!!」
イーブイの大きさでは、どうやら期待はずれだったようだ。
怒り狂い、大きな体が地響きを起こす。
さすがにそこまでの大騒ぎを起こされるとイーブイは眠そうに目を開いた。
「……ぅ……ん?」
「まぁよい無いものよりかはましだな...」.
寝ぼけ眼で声のする方を見上げるイーブイ……
ゆっくりと開けた目は、まだ焦点が合わずにボーとぼやけて何も見えていない。
いまだに寝ぼけているイーブイに気が付いた巨体の持ち主は……
「ぉ。気がついたようだな。」
「ん……っ! はわぁっ!?」
やっと目が覚めたイーブイ。
自分を見下ろす巨大な怪獣の姿にビクゥッ!と全身の毛を逆立てた後、
腰が抜けたのか、コロンと後ろにひっくり返った。
そんなイーブイに巨体の持ち主がズイっと顔を近づけると
『ヒグゥ』と小さく呻いて体を縮め、プルプル震え始めた。
「まぁ、そんなに驚くな。 お前は運がいい者なのだぞ。」
「こ、こ…… ここは……どこ……? あなた……は……? 」
「ここは我の巣だ。そして我の名はグリフィン。」
怯えるイーブイに薄く笑みを浮かべてグリフィンはそう答えた。
自分より遙かに大きいグリフィンに怯えながらもイーブイは恐る恐るたずねる。
「グリフィン……さん…… ぼ、ボクはなんで……ここに……?」
「お前は、我の力を借りるために人間が献げた生贄(貢物)なのだ。
まぁ、お前は少々小さすぎるがな……」
明らかに残念そうにイーブイの体を見て、ため息をついたグリフィン。
だけど、イーブイはそれをジッと見ているどころではない。
自分の体に言い聞かせて、何とか起きあがった。
その表情は恐怖に引きつっている。
「い、いけにえっ……そんなっ…… い……いやだよ……」
少しづつ後ずさりするイーブイ……
少し前に今日あった女の子の姿を思い出す……
(もしかして、あの子が……僕を生け贄に……)
そこまで、考えてイーブイはそれをかき消すように頭を振る。
今日お互いに知り合って殆ど時間がたっていないけど……
[5]
→
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS