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【保】イーブイの章1 小さな生け贄
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イーブイは信じていた。
あの子のあの笑顔を……優しさを……あの時の涙を……
『もう一度、あの子と会わなきゃいけない!』
迫るグリフィンの恐怖に震えながらもイーブイの心にそう刻み込んだ。
キョロキョロと周りに目をやり、懸命に今の状況から逃げだそうと逃げ道を探す。
その目が、グリフィンの奥に開いている洞窟を見つけ出した。
その間にも、グリフィンは怯えるイーブイに言い聞かせるように話を続ける。
「我の生贄になることは、我の下で働くことができる名誉なことなのだぞ。
働くと言っても、我の血肉となって働いてもらうがな。」
「働く、ちにく……? ぇ、ぇ……?」
恐怖でイーブイは、グリフィンが何を言ったのか直ぐには理解できなかった。
でも、自分を見て舌なめずりをしているグリフィンを見て、否応なしに理解する。
「いやだっ…… 怖いよぅっ……いやだぁぁっ!」
恐怖が頂点に達したイーブイの悲鳴が闇夜に響き渡る。
とにかく今は逃げたかった……恐怖からグリフィンから……
出来うる限り全力で駆け抜けて、グリフィンのそばをすり抜けて洞窟の中に逃げ込んでいく。
「我から逃れられると思っているのか!!愚か者!! 」
凄まじい雄叫びをあげ、グリフィンは自分の巣の中の奥に
逃げ込んだイーブイを追いかけて突進していった。
洞窟の中はとても暗く、足場も悪い……
そんな中を奇跡的にイーブイは夢中で駆け抜けていく。
「はぁっ はぁっ……怖いよっ……
生け贄なんて僕しらないもんっ! ……はぁっ はぁっ」
息を切らし、必死に洞窟を駆けるイーブイは、自分の後ろから
ドシドシドシと音が迫ってきているのが分かった……
見てはいけない、心では分かっている……
でも、イーブイは恐怖に負けて振り返ってしまった……
ずっと後ろ……真っ暗な暗闇の中に2つ緑色に光る物が見えた。
「ひぃぅ……追ってきてる……」
「愚か者が、その奥は行き止まり。なんと無意味なことを.....」
追いかけるグリフィンが漏らした言葉で、イーブイの動きが一瞬止まり……
「ぇ……いきどまり……? うそぉ……」
ショックをうけて堅くなった体で、この洞窟を走るのは無理があった……
奇跡的にも今までつまずくことがなかったイーブイも……ついに
ガキッ! ドサァッ!
「うわぁっ!」
地面から少し突き出ていた石に足を取られ、
イーブイは悲鳴をあげながら前に一回転して倒れこんだ。
ドシ! ドシ! ドスッ! ドッシン!!
その間にもグリフィンの足音が地響きと共に響いてきて、『は、早くたたないとっ』と
焦って立ち上がろうとするイーブイを何度も転ばせて足止めをする。
それでも、何とか立ち上がると……
ドッシーン!!!
「キャウ!」
今までで一番大きな地響きがおこり、イーブイはドテッ!と再び転んで倒れてしまった。
そして、イーブイをさらに濃い影が覆う。
「っフン。無意味な抵抗をしおって愚か者よ!!」
俯せに倒れ込んだイーブイの後ろから怒気の混じった声がする。
後ろを振り返るイーブイ……その眼前にグリフィンの大きな足が迫っていた。
「ひ……ひっ……」
ドスッ!!!
怯えて、動くことが出来ないイーブイにグリフィンの大きな足が踏み下ろされた。
足の爪がイーブイの首を挟み込むように地面に食い込み、そのまま押つける。
その衝撃でイーブイの口から『カフッ』と肺の空気が絞り出され……その一拍後、
「うああああぁぁぁっ!」
肺に残った最後の空気で、イーブイはあらん限りの大声で悲鳴をあげた
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