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【保】月の見える夜
01
が彼の隠れている茂みのすぐ前を通り過ぎること……実に四回。
運良く……まだ、見つからずにすんでいた。
しかし、他の仲間達は着実に見つかっているようで、
見つかった仲間の声が、時折…彼の隠れている所にまで聞こえてくる。
「……チュウ」
そろそろ自分も見つかる頃かなと、ピカチュウは小さく溜息を洩らす。
罰ゲームは一番最初に見つかったものだから、今すぐ見つかっても特に問題はない。
そんな諦めにもにた気の緩み……
それを引き締めるかのように、すぐ近くの茂みが音を立てる。
”ガササッ!”
見つかるかも知れないという緊張感が、ドキドキとピカチュウの鼓動を高鳴らせる。
やはり……勝負事は一番になりたかった。
鬼をやり過ごすため、ピカチュウは今まで以上に息を潜めていく……
しかし、茂みを揺らす音は大きくなり、明らかに彼の元を目指してきている。
見つかりたくはないが、どうにもやり過ごせそうにはなかった。
そして、ついにピカチュウは見つかってしまう。
”バサァッ!”
「……ピッ?」
「シュー……ペロペロ」
鬼と向かい合ったピカチュウは硬直する。ピンッと立った尻尾が彼の驚きを如実に示していた。
茂みから顔を覗かせたのは彼の仲間などではない。
むしろ彼等の天敵……本物の鬼が茂みから顔を覗かせている。
「シャー!」
「ピ、ピカァ!」
激しい争いが始まったのか、ガサガサと激しく藪が揺れ始め、
両者の鳴き声が騒がしく森の中で響き渡り、ピカチュウの電撃が藪の中からあらぬ方向へと放たれる。
ついには二人とも絡み合うように藪の中から転げ出てきた。
ゴロゴロと両者は地面を転がり、ついに戦いの全容が明らかになる。
この激しい戦いはピカチュウが劣勢だった。
元々素早い動きが武器であるピカチュウが、地面に横倒しになっていては力を十分に発揮できるはずもない。
電撃の狙いは定まらず、襲撃者のいいように翻弄されているようだ。
それでも諦めまいと必死の抵抗を試みているが、襲撃者の長い身体が徐々に巻き付いて、
ピカチュウの無駄な抵抗を押さえ込んでいく。
五分と経たずにピカチュウは文字通り、手も足も出なくなってしまった。
”ギシリィッ”
「……ピッ……カァ」
身体の骨が軋む音がする。ピカチュウの身体に幾重にも巻き付いた紫の長い身体が、
ギリギリと徐々に締め付けを強くしているのだ。
満足に呼吸も出来ず、ピカチュウの口が浅く開いて小さな舌が覗いている。
口元から垂れた涎が頬を伝いゆっくりと地面を濡らした。
それを見下ろし、ペロペロと先の割れた舌を覗かせる襲撃者の正体は、
『アーボ』という、蛇の姿をしたポケモンだ。
森の中に住む捕食者の中で、小型のポケモンを好んで餌食にしているピカチュウたちの天敵!
たちが悪いことに此奴らは地面を這って移動するため、まったく足音がしない。
油断した獲物に忍びより、恐ろしい早さで筋肉の塊である胴体で巻き付き、締め上げるのだ。
一度巻き付かれたら最後だ……死の抱擁から逃げることなど出来はしない。
まさに今のピカチュウのように……
「ピ……カ………ゥ」
「シュ〜」
早くも息絶え絶えになり始めたピカチュウの様子を探るように、アーボの無機質な目が光る。
独特の呼吸音を響かせて、じっくりと獲物が弱るのを待っているのだ。
待ちきれないと浅く開かれた口に涎を滲ませて。
そして、更に数分後……
「…………」
意識を失ったのかピカチュウはまったく動かなくなった。
それを確認したアーボがとぐろを解いていくと、ピカチ
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