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【保】クチートの隠された本性
01
その日は晴天に恵まれ、空からは眩しいほど燦々と太陽が輝いていた。
「遅いな……」
森に出来たちょっとした広場に誰かの声が聞こえる。
恵みの光を少しでも受けようと、精一杯背伸びする雑草で出来た広場には、
無数の石や岩が転がり、中には数メートルほどもある大岩も存在している。
――と、その大岩に一匹の小さな生き物が腰を下ろして座っていた。
足をバタバタと退屈そうに動かすさまは、何かを待っているようにも見え、
事実にその生き物……『クチート』は、尋ね人が来るのをじっと待っているのであった。
「遅いな……今日は来ないつもりかな?」
両手を支えにクチートは後ろに倒れ天を仰ぐ。
自然と細くなった目にうつるのは、青く広がる空と燦々と輝く太陽……
「ん?」
何か違和感を感じてクチートの目がさらに細まる。
太陽の照らす光……その中に急速に大きくなる黒い影を見つけ、
クチートが笑みを浮かべた。
同時に素早く頭を振る。
ガギィッ!
堅い物同士がぶつかり合う音が響き、何者かが宙を舞った。
「クソッ! 気づかれたか!」
鋭い爪の一撃をクチートの頭部……巨大な大顎が軽々はじき返えし、
その頭上を飛び越えるように何者か……『ザングース』が宙返りをして着地する。
着地の際、殆ど物音がしなかった。
見事な身のこなしを見せ、ザングースは素早く振り返えりクチートの姿を探す。
だが……その必要はなかった。
何故なら攻撃を凌いだ後もクチートは大岩の上から動かず、ザングースを見下ろしたのだから……
「中々いい不意打ちだったよ。
たまたま上を向いてなければ危なかったなぁ」
「フンッ! 笑った顔で言われても嬉しくないぜ!」
憎々しげに言い捨て自分を見下ろす相手を睨めつけると、
四つん這いになり、ザングースは何時でも飛びかかれるように身を屈める。
だが、迂闊には飛びかかれない。
その理由をザングースはイヤと言うほど知っていた。
大岩に座り笑っているだけの相手は、生半可な実力ではないのだ。
内心……この相手に恐怖を感じるほどに。
(ぐぅ……此奴、何時も俺を笑って見つめやがって……)
それを振り払おうとする度に、思い出したくもない戦歴が思い起こされる。
67戦67敗……それが、このクチートとの戦歴であった。
最初に出会ってから、すでに一年以上……
毎回、からかうように彼を翻弄し、屈服させ、トドメを刺さず帰って行く。
そんなクチートを倒すためザングースは何度も戦いを挑んだ。
遙かに上手……悔しいがザングースはクチートの力をそう認めていた。
そんな相手を倒すため様々の戦術も考えた。
不意打ちもこれが初めてではない、だが、その度に軽くいなされてしまう。
それが積み重なり出来上がったのが、この連敗記録であった。
「ねぇ……来ないの? アハハ……もしかして、僕が怖かったりする?」
「くっ! 絶対にお前に勝ってやる!」
クチートの挑発が絶妙のタイミングでザングースの心の揺れついた。
見事に図星を付かれたザングースの頭に血が上る。
『単純で直線的』
……良くも悪くもそれが彼の性格であった。
ため込んでいた力を爆発させ、一気にクチートの元へと突っ込んでいくザングース。
その姿を見て、クチートが心の中で冷ややかに笑っていた。
(まだまだ、遅いよ……)
「これでも喰らえ!」
身体が霞んで消えるほどの電光石火から、繋げる鋭い爪の一撃。
その一撃は違わずクチートのいた場所を捉えていた。
振り下ろされる爪はクチート諸共、大岩を容易く抉りとる。
ま
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