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【保】クチートの隠された本性
01
さに必殺技であった……命中すればの話だが……
「う〜ん……動きが単調だよ。
それじゃ避けてくれと言っているのと同じ……前も言ったよね?」
「くっ……そぉ……」
耳元で聞こえたクチートの声に、ザングースの顔が悔しさと恐怖に引きつる。
ゆっくりと振り返るザングースの肩の上……
そこに両手をかけてのし掛かっているクチートの姿があった。
「はっ……離れろ!!」
「おっと……危ない危ない」
なぎ払うように振り回された腕をクチートは軽やかに避ける。
ついでとばかりに横っ腹に蹴りを入れて、ザングースの姿勢を崩すのも忘れずに……
「あぐっ……貴様……」
「ほらほら、頭に血が上ってたら当たるのも当たらないよ?」
鈍い痛みが走る腹に手を当て、ザングースが向き直る頃には、
距離を取り体勢を整えたクチートが、軽やかなステップすら刻んでいる。
完全にザングースは子供扱いであった。
「ぐぅ……がぁあああ!」
「だから、怒っちゃダメだって言ってるのに」
怒り狂うザングースに対し、クチートは余裕の笑みを絶やさない。
……全ては手の平の上で踊っているのだから。
仕込みはザングースの不意打ちを受けたときから始まった。
不意打ちで先手を取られた優位を余裕の笑みで、精神的に互角に持ち込む。
難しいことではなかった、散々自分に負け続けたザングースはそれだけで牽制になる。
次ぎに言葉で揺さぶりをかけ、ザングースの心を乱す。
これまでのザングースとの戦いで、クチートは彼の性格を知り尽くしていた。
単純で直線的で直ぐ頭に血が上る。
クチートにとって彼を挑発することなど容易かった。
案の定、真っ直ぐに突っ込んで来た動きを冷静に見切る。
速いことは確かに速かったが、飛び込むときの利き足の動きで軌道がバレバレ。
影分身を目くらましに死角に潜り込み、ザングースの背後へ……
あえて直ぐには攻撃せず、さらに言葉で心をかき乱しダメ押しすれば、
この勝負ほぼ勝ちは確定していた。
単調極まりない攻撃を避けながら、クチートは心の中で呟く。
(……退屈だな)
ザングースが最初に見せた素早い一撃は、すでに見る影もない。
我を忘れた力任せな一撃は、クチートが僅かに身体を反らすだけで避けられてしまう。
すでに終わった戦いであった。
後は適当に隙を付いてクチートがザングースを倒すだけ。
「ねぇ、飽きちゃったから終わりにするよ?」
「なっ! くっそぉおお!」
いかにも欠伸が出そうな声を聞かされ、半ばやけになって突っ込んでいくザングース。
振り下ろされる鋭い爪を、クチートは紙一重で避けるとすれ違いざまに……
ガブッ!
頭部の大顎でザングースの頭部を咥え込んだ。
そして、クチートが大きく前転、その動きに引きずられザングースの身体が宙を舞った。
ドガァッ!
「ガフッ!」
ザングースは腹からまともに地面に叩きつけられ、かなりの衝撃が背中まで突き抜ける。
その背中へクチートが容赦なく飛び乗り、手を取ると即座に間接を決めた。
完全に動きを封じられたザングース。
戦いの勝敗は誰の目から見ても明らかであった。
それでも現実を突きつけるようにクチートが、自分の勝利を告げた。
「これで、僕の六十八勝目だね」
「痛ぇ……貴様……鬼か」
「心外だなぁ、僕はこんなに可愛いじゃないか」
自分の下で呻くザングースに笑いながらクチートが話し掛ける。
イタズラっぽいその笑顔は確かに可愛くは見えるが……
「その性格じゃっ! あがぁっ!」
「ホント君は失礼だなぁ、こんなに優しくしてあげてるの
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