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【保】竜と絆の章4 火竜の印
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『塔の中に宝がある』
そんな噂が流れ幾月が過ぎていた。
人づてに広まる噂はいつの間にか、遠い街にまで届くようになっている。
……それがとても奇妙だ。
普通の噂話はこんなに長続きなどしない……
何度も話題に取り上げられるような話、世間を騒がせている有名な話ならまた変わってくるのだが、
広がっているのは子供が作ったような根拠もない、信憑性のかけらもない、
まるで御伽話のような単なる噂話が……だ。
それが何時までも消えずに残っている。奇妙だと思わないだろうか?
どうやら、そう思った者達がこの世界にも数多くいたようで、
塔の周辺にある近隣の村や町には、物好きなもの達が集まり賑わいを見せてようになった。
誰が流したのかも分からない噂を頼りに、よくこれ程の数が集まったモノだが、
よくよく考えると分からないから、夢中になるのかも知れない。
だが、それは幾月の時間が経過したいまも、これだけ噂が広がると言うことは、
いまだ塔の真実を確かめて、帰還した者がいないと言うことだ。
※ ※ ※
遅すぎるぐらいだが、少しだけ塔のあるこの土地について説明しておく。
地理的には南国……といったふうだろうか?
気温は南国らしくやや高めで、天候は……温帯な地域にしては雨が少ない(ただし、降るときは凄まじいが……)。
雨があまり降らないにしては不思議なほど、鬱蒼と茂るジャングルを連想させる広い森が、
この地域の半分を覆っていて、残りの半分の半分が広い平原になっている。
人間達はこの平原に幾つかの街をつくって住んでいると言った具合だ。
そして、残りの四分の一は川だ。
大きな川が森を東と西に分けるように流れていていて、長い時間の間にできた支流が森の中を
網目模様のように流れている。
このとてつもなく広い森の中央に……塔が立てられていた。
それゆえ塔を目指すには、必ずこの森を通って行かなくてはならない。
それが困難な試練になると分かっていてもだ。
背が高く生い茂る木々が視界を遮り、同じような風景が容易く方向感覚を奪い去る。
もし翼を持つ者ならその心配も要らないだろうが、多くの者はそうはいかない。
進むことも戻ることも困難なこの森を行くには、常に磁石を使用して自分の位置を確認することが必須だ。
それを怠った者はいずれ力尽き、弱り果てたところを森に住む、
獰猛で狡猾な生き物たちに襲われ、食われてその命を落とすことになるだろう。
さらに道を進む者の前に立ちふさがる、幾多もの川。
川と言っても、川幅が恐ろしく広いものもあって運が悪ければコースを変更しなければ、
前進することも出来ないと言う状況もざらである。
※ ※ ※
そんな森の中を一人の少年が歩いている。
それも真っ直ぐに塔を目指していて、もうすぐ森を抜けそうなのだ。
あともう少し……そう、目の前の茂みを抜ければ……
”ガサガサッ!”
「はぁ……はぁ……ようやく……着きました……」
茂みをかき分けて急に開けた視界に、安堵する少年の額からは一滴の汗が流れ落ちる。
背丈は小学生の高学年と言ったところだ。
森を舐めているのか、身に付けている衣服も素肌が剥き出しの半袖半ズボンという出で立ちで、
滴り落ちる汗を肩口で拭いさると、疲れたように息を吐き出した。
”ドサッ……ズッ”
汗を拭った際に力を抜いたのか、少年の背中から背負っていたリュックが滑り落ちた。
随分と重そうな音を立て落ちたリュックが、自重で傾きそのまま横
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