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凍りついた時間を溶かす者
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− 暗き森へ −
僕らが村を離れて数分、太陽は今にも山の影に隠れようとしていた
黄昏時の風景は、何処と無く寂しい気持ちにさせる
それとは反対に僕らが今いる森の中は、不気味に薄暗く、それでいてさっきよりも寒いと感じる
背丈の高い木々のお陰で、太陽の光が地面にまで到達しないからなのかもしれなかった
“ヌチャ、ヌチャ”と、半練り状のぬかるんだ地面を踏みしめながら僕らは暗闇をランプの光でごまかしながら、奥へと進んでいた
時折後ろから唸る声が聞こえるのは、ラルトスがぬかるんだ道に対して不満をもっているからだ
「う…なんでこんな所を進まなくちゃいけないのよ……」
確かにラルトスには、この道は信じられないかもしれない
「最近は、こんな泥を使った美容方があるらしいけど?」
ゾロアがそんなことを言うと、ラルトスは目を見開いた
それから地面に視線をおとすが、すぐに前を向き首を傾げていた
「そんなことよりほら、着いたぜ」
ゾロアがランプを地面に置いて言った
森の中でぽっかりと空いたその場所は、月明かりに照らされて、不気味というよりも幻想的といった方がいいのかもしれない
「……特になにもないな」
ゾロアが辺りを見渡しながら言った
「そうね、なんだか怖いというよりもこの場所、悲しい気持ちになるわ……」
念力や催眠術が使えるラルトスには、この場所の雰囲気を感じ取っているのだろう
「……帰るか」
「そうね」
そう言うと、僕らは来た道の方に向いた
「……ゴンべは?」
僕がそう言うまで、二人は気づかなかったかのように、体をビクッ! と反応させた
「そういえば、アイツどこに行ったんだ?」
キョロキョロと辺りを見渡すゾロア、その視界の端に、お目当ての奴はいた
「あ、いたいた。おーい、なにしてんだよ」
ゴンべを見付けて、走り寄るゾロア
「駄目! 逃げて!」
突然、ラルトスが声を張り上げた
「えっ?」
ゾロアがこちらを振り向く、その時信じられない事が起きた、さっきまでいたゴンべが消えているのだ
「な、なんで……」
僕がそう言ったその直後、ゾロアの背後から何かが飛び出してきた
「! う、うわっ」
その何かが、ゾロアに巻き付いてきた
見るからに僕らよりも遥かに大きいそれは、この付近はおろか、この世界にだってあまり見られるものではないのだろうか
それほどまでに大きなものだった
<2011/09/29 21:17 ルカ>
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