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冷たい空と暖かい太陽
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しかし、まだ希望はある。僕はまだ死んでいない。恐らく死ぬまでの時間はまだ長いはずだ
完全に事切れる前に、この体内から脱出出来れば、僕は死なずにすむ
「…………よしっ!」
いつまでもくよくよしていてもしょうがない。早く行動に移さないとな
そう自分に言い聞かせて、僕は顔を上げた
天井を見ると、さっき自分が通って来た道は既に塞がれていたが、そんなのは関係ない。無理矢理でも広げて、外に出てやる! そう決意した
一方ルギアは、腹の中でポコポコ動くヒトカゲを感じていた
「なかなか、うまかったが、やはりこんな小さな獲物では、腹は膨れんな……」
そう呟き、チラッとヒトカゲが運んできた貢ぎ物に眼を通す
「……そうか、村に行けば、奴のように旨そうな獲物がたくさんいるか」
ジュルリ……と溢れ出る唾液を拭い、ルギアは村に向かって歩き始めた。少しだけでも、楽しみにする時間を長くするために、飛んで直ぐに着こうとは思わなかったために、あえて徒歩を選んだのかもしれない
「待っていろ、私の貢ぎ物達……フフフ」
その眼は既に、神というよりも、悪魔に近かった
この辺りでは、どうしようもない者達という意味で、『神』という言葉が使われる
そう、ルギアは今まさに、神になったのだ
「うわっ! ゆ、揺れる!」
ルギア様が動き出したことで胃袋が揺れ始めた
それと同時に、僕はべシャァッ! と情けなく転んだ
足場が安定しなくて、あたふたと慌てていたが、何とか立ち上がることができた
「うぅ……身体中ベタベタだ……」
ヌメヌメとして胃液が身体中を包み込んでいた
とても気持ち悪いうえに、胃壁を登ろうとするとそのヌメヌメのせいでツルツルと手が滑る
「うぅ……登りにくい……。でも、登らないと僕は、」
あまり信じたくない考えを投げ捨て、僕はルギア様の胃壁を掴み、登り始めた
「……うぐっ! 吐き気が……」
ヒトカゲが胃袋を登り始めたことで、ルギアは胸に不快な気持ち悪さを感じた
「おのれ、まだ抵抗するつもりか……」
ルギアは、その場にうずくまり、うめき声をあげている
「貢ぎ物のくせに、生意気な!」
そう言うと、ルギアは体を勢いよく起こした
<2011/07/20 23:02 ルカ>
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