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rain tears -心の涙-
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− 孤独という世界 −
「回復魔術は生憎、持ち合わせてないんでな」
テーブルの上にシーツを引いた簡易の処置台に仔を降ろす。
「これは……酷いな」
私は自然とそう漏らしていた。
決して傷が酷いからではない。
男とは思えない程に痩せ細り、生傷も多く見られた。
「……熱いぞ。我慢しろ」
魔術師なら始めに習得する下位火魔術を発動。
下位とはいえ、傷を灼くには十分。
大きな腹部の切創を灼く。
「ぅっ!?」
肉の焼ける匂いと共に傷口が塞がる。
不謹慎だが腹が鳴ったのは黙っておこう。
随分と体力を消耗していたようだが、
今のでさらに消耗してしまっただろう。
「……厄介な奴を拾ってしまったようだ」
自嘲めいた笑みを零す。
だが、今の心情は嫌いじゃない。
孤独な一夜如き、こいつに捧げてやるとするか。
<2011/08/30 00:17 セイル>
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