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rain tears -心の涙-
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− 狼姉と子供 −
「今、帰ったぞ」
「あ、お帰り」
「そんなに動いて大丈夫か?」
「うん。狼姉(おおかみねえ)のお陰だよ」
「そうか」
黒法衣を脱ぎ、埃を払う。
そして、魔銃を片そうとして気付く。
お金やら貴重品をしまう棚の中身の位置が違う事に。
「……誰か来たのか?」
「ううん。どうしたの?」
「いや……少し気になってな」
とりあえず、魔銃をしまい物資を詰めた紙袋を片手に仔の向かいに座る。
(気のせいか……)
紙袋から消毒液、ガーゼ、包帯を取り出し、机に広げる。
仔に近くの長椅子に横になれと促す。
「お前にいくつか聴きたい。嫌だったら答えなくとも良い」
「……うん」
「知人や親戚はいるか?」
無言で首を横に振る。
私は消毒液を染み込ませたガーゼで傷を殺菌する。
傷はまだ痛むらしく、ガーゼが傷を撫ぜる度に顔を顰める。
「親はいるのか?」
これには何も反応がなかった。
やはり、そうだったか。
可哀想に……
こんなボロボロになってまで生きようとしているのに、
誰も助けようとしないとは……
「身寄りが見つかるまで面倒は看てやる」
微笑みとはほど遠い、微笑みを浮かべて優しく頭を撫ぜる。
あそこで出会ったのも何かの縁だ。
最悪、最後まで面倒看るのも悪くない。
独りになってから何年経つのだろうか……
独りにはもう飽きた頃だしな。
<2011/09/05 09:40 セイル>
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