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消えた理性 Final
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「ジュカ…イン…」
海岸に戻ったカイオーガが見たのは、体中から血を流し、ぐったりと倒れているジュカインだった。
「えぅ…うぅ…ぇぐっ…」
またしても守れなかった。いつも一緒に笑いあった、最高の親友を。
悔しさと悲しみは、涙となって目から滴り落ちる。
…ポタリ
「ジュカイン…起きてよ…」
「……」
「…ねぇ…お願いだから…」
「……」
「うそだ…えぐっ…死んだふりなんて……らしくないよ…ぁぁ…」
カイオーガは倒れているジュカインに向き合い、涙声で訴える。
しかし悲しみは頂点に達し…
「うわあああああああんんんん!!!!」
生まれて初めて泣き叫ぶ。今までの全ての
思い出を、雫として落とし…
「カイオーガさん…」
ミズゴロウだった。
状況を理解すると、カイオーガの隣に座り、沈黙した。
「ごめんなさい…僕が寝てる間にこんな…」
「…いいんだ。それより…」
カイオーガはエターナルメモリを取り出す。恐らく考えている事は2人とも一緒だろう。
「これ…使えない?」
「分かりません…命を増やす事はできても造る事は…」
「…やってみるよ。」
カイオーガはジュカインの胸にメモリを近づけると、ゆっくりと差し込んでいった。
「………」
沈黙が続き、日は西に沈み始めていた。
「…カイオーガさん…僕…」
「いいよ…好きにしてて。」
ミズゴロウが離れた後も、カイオーガはジュカインをずっと見続けていた。
もう夜もとっぷりと暮れ、きらびやかな星が出ている。
「…ぅ…」
「…!!」
ジュカインが静かに目を開けた。意識は朦朧としているものの、目に光が戻っていた。
「…カイ…オー…!!」
突然強い力で抱きしめられ、顔が温かいものの中に埋まる。
「んんんん!?」
「ジュカイン…良かったぁ…ひぐっ…」
涙をポロポロと垂らしながら、カイオーガは微笑みを見せる。
「お、おい…苦しい…」
「えっ…ご、ごめん…」
ようやく離れると、カイオーガは安堵のため息を漏らす。
「えっと…お前が助けてくれ…たのか?」
「ううん、君ががんばったよ…嬉しい♪」
カイオーガはとびっきりの笑顔で、再び抱きしめる。
「うむぅ…むわぁ…」
「ごめんね…守れなくって…」
「い、いいさ、生きてるんだ。俺も…」
「またお前に会えて、嬉しい…から。」
カイオーガの胸の中で、赤くなりながら言うジュカイン。カイオーガの温かさ、生きる事の温かさが、直に伝わってくるようだった。
「ジュカイン…ありがと♪」
「何がだよ。」
「…分かんない♪」
カイオーガはそう言うと、更にジュカイン
の顔を胸に押し付けた。
…プニュウ…ムニュムニュ♪
「あ…」
「クスクス…何を期待してるの?」
「バ、バカやろ!別にそんな…」
「う〜〜ん、やっぱりかわいいねっ♪」
…ムギュウ♪
カイオーガの抱擁は、朝まで続いたらしい…
<2011/05/15 14:24 ロンギヌス>
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