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バベルの塔
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− 雨の中で −
「ぐぉ…出せッ…!! 汚らわしい…!!」
ゲーチスは暑苦しい肉のチューブを落ちながら喚いた。
肉厚な壁にもみゅもみゅと全身を弄ばれようとも、ルギアを憎む心だけは折れていないのだ。
しかしその憎悪も持ってしても、肉壁を這い上がることは出来なかった。いつしか食道というトンネルを通り過ぎ、胃袋らしき空間にボテッと落とされる。
「….またか…また来てしまったのか……ここに…」
この胃壁の色も、艶も、ぶよっと弛む感触も。プンと香る臭いも、この座り心地も。
すべて嫌というほど鮮明に覚えていた。乾いた部分など百年探しても見つからなさそうだったが、胃酸と思えるような液体はまだ出ていない。
しかし以前に喰われた際は、何の慈悲もないままあっさり消化された気がする。
得体の知れない悪寒が、背筋を駆け上った。
「フフフ….どうだ? 数年ぶりの私の中は」
「き、貴様…….最悪に決まっているだろうが!!」
「ほう、それは残念。最期は笑顔で逝かせてやるつもりだったのだが…」
どう聴いても皮肉100%の口調だ。そんなヤツの体内に保管されていると思うと、空気を吸うごとに不快感が募った。どうせ地獄に帰るのならば、このルギア以外の手で逝きたいとすら思った。
「…まあ君の息子は親友だが….彼も君のことはあまり好きではないらしい。君を消化されるのを、私に抱かれながら見ていたのだからな」
「….なにっ…?」
「あの時は事情があってすぐに君を溶かしてしまったが….今回は違う。時間はたっぷりあるはずだ。だから君のその筋肉の一本一本まで…...」
「…玩具にできる」
「く….くそが….!!!」
「おっと、言葉には注意した方がいい。暴言は身を滅ぼすのだぞ? まあ…仮に君がそこで土下座しようとも、吐き出してはやらないが。少なくとも寿命は伸びるんじゃないのか?」
ルギアの声は一方的に飛んでくるのに、自分の声はグニグニと揺れる胃壁に反響しているだけにしか思えない。
つまり消化されるのは疑いようもない未来であって、これから自分はそれに至るまでの時間をルギアに弄ばれるというのか? ふざけるな。
「…調子に乗るのもいい加減にしたまえ! たかが体内に入れただけで私が諦めるとでも…」
「ああ…諦めるさ。諦めさせる」
その言葉が口火だったようだ。
次の瞬間、胃壁の蠢きぐあいが活発化した。豊満としかいいようのない、ふっくらした壁が急接近してくる。
と同時に唾液が胃袋の底を満たし始め、徐々に立っていられる部分が少なくなっていった。気がつけば周りは唾液のプール状態で、自分は肉の島の上で立ちほうけている。
スププッ….ぶよっ…ぶよっ…..
「ああっ、ち、畜生めが….!!!」
肉島の上で立って数秒もすれば、そのあまりの柔らかさ故に沈んでいってしまう。だから沈みそうになればサッと脚を入れ替えるという、我ながら滑稽なダンスを踊る羽目になっていた。何しろこんな憎たらしい輩の唾液(それもネットリ)に溺れるだなんて……考えたくもなかった。
「き、汚いプールだ……」
「黙れ。」
ルギアは険悪な声で言った。
「死の淵でぐらい大人しくしていろ。私がちょっと力を出せば貴様など二秒でスープになるということ、忘れるな」
「それに君は知らないようだな…….敵を体内に押し込めた者が、九割九分勝つということを」
「な、なにを戯れ言を…」
「フフ….すぐに分かるさ、嫌でもな」
その言葉を最後に、ルギアは
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