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バベルの塔
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− 裏切りと制裁 −
いつくばっているブースに近づくと、顔面から笑顔をサッと消した。
「さて…ブース、分かっているであろう?」
「ひ…!!」
「我が社の規定….社に一億を超える損害を与えた社員に対しては、制裁を加えると….」
ひとつ数億円という星を、保身のためにバビロンに渡したブース。
それが暗に意味しているのは、彼の忠誠心の低さだった。
「し、しかし会長…!!」
「ふ…己の油断が招いた結果ではないか。
貴様がウィルスを侮っていなければ、メモリ一本で勝負に行けるはずがないのじゃ」
「か、会長ぉ…..どうか….あの….!!」
「万死に値する。…ラファエル?」
「はい」
ラファエルと呼ばれた竜が前に進み出る。
バビロンと体型は似ているが、肩にはロゴではなく『0』という刺青が青く光っていた。
見たところ、ウォリアの側近や秘書といった立ち位置だろう。
雄らしい肉付きのいい腕を伸ばし、あからさまに怯えるブースを抱き上げた。
「……執行します」
「あ…はッ…..やめろ….助けてくれぇぇ…!!!!」
ラファエルはブースの脇に手を差し込み、天井近くまで持ち上げる。
人生最後の「たかいたかい」を受けるブースの顔には、もう一滴の余裕すら無かった。
渾身の抵抗もラファエルからすれば、赤子の手を捻るようなもの。
ぐぱぁ…….
「や….や、めろ…….おい…」
マシュマロのように白く幼い表情の上に、口内のピンクが顔を覗かせた。
笑顔でも怒りの表情でもない口元からは、ドラゴン特有の立派な唾液が誇らしげに落ちてくる。
ラファエルはスッと目を細め、悶絶する足をパックリと咥えた。
グプッ….ぬちゅっ….
「ひ…ぅああああッ!!!!」
足先がぶよぶよした喉肉に捻じ込まれ、粘液質な音を立てたながら呑み込まれていく。
ラファエルのささやかな配慮なのか、牙はいっさい使う気配は無い。
しかしどちらにせよ落ちる場所は同じ。単にルートが異なるだけだ。
グプゥ…..ゴックン。
まるで喰われるのが当然のように、ブースはあっさりと呑み下された。
喉元に一瞬だけ巨大な膨らみが生まれ、ゆっくり胃袋を目ざして降下していった。
そのあまりに順調な捕食劇に、ロンギヌスはぽかんと口を開けた。
いい意味でも悪い意味でも、あのラファエルという竜、人を喰らい慣れているに違いない。
「…..ラファエル、あとは任せる」
「了解です」
見かけどおりの美しい透き通った声だが、ロンギヌスとバビロンは身構えた。
様々な修羅場を抜けてくるうちに、「任せる」=「殺れ」という方程式が成り立っていたのだ。
しかしラファエルはこちらを向くと、右手を胸に添えて一礼した。
「お恥ずかしいところをお見せして、大変申し訳ごさいませんでした。
会長が御二方にお話があるそうなので….よろしければ紅茶でもご一緒願えますか?
VIPルームにご案内させていただきますので」
「・・・・はい?」
「…これも策略か………」
耳を疑った。バリバリの敵である自分達を、VIPルームに招待するなどどういう訳だ?
と、一度は疑心暗鬼になったものの、ずっと頭を下げられているせいか、次第に警戒の波が引いていくような気がした。
「バビロン…..行こう」
「なっ、何を言っ…」
「大丈夫…..こいつ、嘘はついてない」
たいした第六感ではない。
しかしそれでも、ラファエルの清純な瞳には感服させられたのだ。
話ぐらいは聞いてやろうと、ロンギヌスは前に進み出た。
バビロンも取り残される訳には
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