[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
バベルの塔
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 32 33
− 剣が折れるまで −
手をグーにしたまま、両手を顔の横まで上げる。
素直に降参を認めた彼にフンと鼻を鳴らし、男は銃を引っ込めようとした。
「あ、そうだ言い忘れていた」
「なっ…ああアッ!!?」
ガシッ…グイッ…ガチャッ…!!
突如、バビロンはその男の首根っこを掴んで引き寄せると、ヘッドロックを掛けて身動きを封じた。
さらには拳銃を勢いよくもぎ取り、銃口を男の口にグイッと押し込む。
男は痛みと恐怖に呻いたが、彼は一顧だにしなかった。
咄嗟に他の社員たちも銃を取り出したが、バビロンは薄ら笑いを崩すことなくそれを制する。
「…まぁやめとけ。こいつの喉が吹き飛ぶぞ」
「あ….ががッ…..ご…」
「フフッ…お前もそんな引き攣った顔するな。
いっそ、引き金引いて一緒に心中しようか?」
銃を使うまでもない。
腕っ節の良い彼がちょっと脇に力を込めれば、か弱い男の首など一瞬で砕けてしまう。
だがそれを犯せば、瞬く間に後方からの弾丸がバビロンの頭を撃ち抜くだろう。
バビロンは銃を捨て男を解放した。
首を押さえながら、男は怨みの目で彼を睨めつける。
「….フフ、悪かったな。こういうの一度やってみたかったんだ」
「貴様…!!!!」
「だが解ったろう…今は勝負中、第三者が横から下手なちょっかいを出すな。
今度妨害するような動きがあれば…..首と胴が繋がっている保証はないと思えよ」
ドスの効いた声で釘を刺されたためか、男に言い返す素振りはなかった。
ただ先程よりも少し離れた位置で、バビロンの監視に戻った。
「….待たせたな、勝負開始だ」
「いえ……」
ラファエルに向き直ると、バビロンは再びカードを手にした。
打って変わって勝負の雰囲気が、二匹をドームのように包み込む。
互いに『死』『消化』『敗北』などの単語が頭の中を駆け巡っていた。
最後の心理戦、その幕が上がった瞬間だった。
=========
先攻権は四回戦の敗者、ラファエルにあった。
負けが込んでいたにも関わらず、彼のカードのバランスは悪くなかった。
最強である2は無いにしろ、Aが二枚とKが二枚。
さらに同じ絵柄で6、5、4が揃っているため、階段を起こすことも可能だ。
バランスを重視するのであれば、これは確かに最高の札ぞろいかもしれない。
「(さっき無かった8があるのは幸いですが…..ただ、
2を持たずというのは多少痛いですね…)」
猛者は持っているが、最高戦力は持っていない。
こちら側に2が無い以上、その在り処はバビロンの手札か、もう二度と使用しないであろう余り札の山の中だ。
「(初手こそ勝負の最初の分岐点…...ここで勝ちの流れを呼び込まなければ…)」
12枚のカードを食い入るように見つめ、最善な戦法を組み立てていく。
時間制限が設けられていないのが幸いだった。どんな勝負においても焦りは禁物。
相手を待たせていることなど、思考の片隅にも置いてはならない。
何しろこれはパーティーゲームではない、両者の命を賭けた大博打なのだ。
パサッという音を立て、ラファエルは様子見の3を投げた。
バビロンはすぐさま、4でそれを切り返してきた。
彼の即決に不安を募らせながらも、ラファエルは手札から目を離さなかった。
「(流石にAやKを使うのは早いですね…..ここはひとまず7辺りで保険を…)」
その考え通りに指先を動かし、ラファエルは7のカードを提出する。
ところがカードから手を離した瞬間に、津波のような後悔がどっと押し寄せてきた。
別段、そのカードの選択にミスを感じた訳
[4]
← [5]
→
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS