[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
バベルの塔
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 32 33
− 剣が折れるまで −
ではない。自分の考え方に問題を見つけたのだ。
「(な、何でカードを凝視してるんですか私は…!!
相手の心を探るのが勝利への近道だと…..あれほど骨身に染みていながら…!!!)」
有利。安全。確率。合理的。
バビロンがそんな縄で縛れるほど軟弱ではないことは、今までの戦いで嫌というほど思い知らされた筈だ。
それなのにまだ、「計算」や「定石」という沼に浸かったままでいる。
まだそんな浅い思考しか築けていない自分に、ラファエルは嫌気が差した。
「(負けたら…...居場所どころか命さえ…)」
負けたら死ぬ。負けたら死ぬ。負けたら死ぬ。
ただひたすらに、その言葉を心の中で念仏のように繰り返す。
それが一段落着いたときに初めて、バビロンがカードを手に取る瞬間を見ることが出来た。
ーーーパサッ。
「え…!!?」
「どうした…不満か?」
「あ、い…いえ…何でもありません….」
バビロンが場に出したカードはA、特に変わったところは無い。
だがラファエルの心拍数は、そのターンを機に上昇し始めた。
実はこの時、ラファエルの目が、勝利への糸口となるような事実を捉えていたのだ。
視線を自分のカードからバビロンの動きに向けたお陰で見つけた、まさに値千金の発見。
それは・・・・
「(まさかこいつ…..手札を並び替えてる…?)」
バビロンは手元のカードを左手に持ち、扇のように広げている。
そこから右手でカードを選択する、というのが彼の手法なのだが・・・
バビロンはさっきAのカードを提出する際、カードを扇の右寄り(ラファエルから見れば左寄り)から引き抜いてきた。
別にそれだけなら何も異常は無い。
だが前回のターンで彼が出した「4」は、その逆、左寄りから取ってきた記憶がラファエルにはあった。(ラファエルから見れば右寄り)
大富豪のルールを知っている者なら、「4」は弱い、「A」は強いと認識するだろう。
そう考えると、バビロンは弱いカードを右から、強いカードを左から持ってきたことになる。
単純な話、バビロンは強いカードを扇の右に持っていく癖があるかもしれない、ということだ。
「(これは使えるかも…...いや、確実に使えますね….)」
ところが容易に突っ込むのは危険極まりない。
その2ターンの話だけでは、その仮説が正しいとは証明できない。
ここはそれを踏まえた上で、もう一度相手の動きを観察するのが先決だ。
思いもよらぬ発見に驚愕するあまり、バビロンが不審そうな表情でこちらを窺ってきた。
ラファエルは慌てて何食わぬ顔を取り繕い、この最終戦で初となる「パス」を宣言した。
バビロンはしてやったり、という感じの顔を浮かべると、間もなく手元の扇に手を伸ばした。
彼が指先で摘んだのは、確認するには好都合な、最も左端にあった二枚のカードだった。
これらが「弱い」カードでありさえすれば、ラファエルの疑念は真実であることがほぼ立証される。
それさえ分かれば、この先どれだけ有利に勝負を進めていけるだろうか。
ラファエルの無言の懇願が漂う中、バビロンは迷うことなくダブルを場に吐き出した。
ーーー3のダブル。
ラファエルは歓喜に震えた。思わずテーブルに手を着いて立ち上がりそうになる。
間違いない。カードを強い順番に並べて持つのは、バビロンの癖だ。
彼は十中八九、手中のカードの並び替えが見破られることに、微塵の心配も寄せていないだろう。
無理もない、大富豪とはそういうゲームだ。相手のカードを覗くことは許されない。
ただし・・・
「
[4]
← [5]
→
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS