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バベルの塔
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− 最後のギャンブル −
。
自分の発見は紛れもない事実だったと誤解する。
そしてここからが、バビロンの戦略の最終段階だった。
「……心ってのは意固地なもんでね。
とある理論を見つけて確信してしまうと、容易にはそれを捨てられない。
それが勝利に繋がるかもしれない、という淡い期待から抜け出せないんだ」
それが心のメカニズム。
発見したときのインパクトが強ければ強いほど、その理論はピッタリと脳裏に張りついてしまう。
絶対に離れられない……いや、離れようとも思わなくなってしまうだろう。
何しろそれが、やっと見つけた希望なのだから。
「ふむ…....」
「これだけのことだ。それでは早速」
「あっ….」
一通り説明し終えると、バビロンは鷹のような速度でキューブを奪い取った。
偽物であることを恐れているためか、手の中で数回ひっくり返して確認する。
そして数分後、間違いはないと判断したバビロンは、
それをウォリアの前で床に叩きつけた。
さらに半分に砕け散ったキューブの残骸を、巨足でグリグリと押し潰す。
その跡には小さなネジやICチップが、ガラクタとなってカーペットの上に散乱していた。
「フフ…...身の毛もよだつ快感だな。癖になりそうだ」
「…賞品はそれだけではなかったと思うが」
「ああ、当然だ」
何はともあれ、人質となっていたロンギヌスの返還だ。
ウォリアはポケットから小さなカプセルを取り出すと、横たわるラファエルに近づいた。
バビロンを褒め称えたときとは、まるで人が変わったような口調だった。
「嘔吐誘導薬じゃ。何をボサッとしとる、口を開けんか」
「会長….それは…。吐きます、自分で吐けますから…!!」
「黙れ、この小童が!!!!」
高級な革靴が顔を蹴る、ボゴッという鈍い音が響いた。
ラファエルは頬に靴の汚れを張りつけたまま、強引にカプセルを口に押し込まれた。
水を与えてもらうことさえなく、ゴクンと喉を鳴らす。
効果が現れるのに一分も掛からなかった。
ラファエルは口を押さえ、打ち上げられた魚のようにのたうち回った。
しかし翼と首を固定されているため、悶えることさえ満足には出来ない。
口の端から、唾液や胃液がトロリと零れだす。
そして身を悶え続けた末に、粘液でふやけかけたロンギヌスを吐き戻した。
「マスター…!!」
バビロンが駆け寄って彼の頭を抱きかかえた。
意識は無かったが、動悸はしっかりしている。気を失っているだけだった。
バビロンはホッと胸を撫で下ろすと、抱き上げてソファにそっと横にさせた。
「さてさて….最後の仕事が残っているようじゃ…」
「ひぐぁ…ぅ….オェェ…」
どうやら嘔吐剤が爆発的に効いたらしい。
ラファエルは胃が空になった後も胃液を吐き出し続け、カーペットに水たまりを作っていた。
「この穢れ虫めが….床まで汚しおって。おい!!」
「「「はい」」」
「やめべ….まっ…待ってくださぎ…!」
助けを乞おうとしても、声にならない嗚咽が繰り返されるだけだった。
ウォリアは三人の部下にメモリを使わせ、怪力でラファエルの巨体を持ち上げさせる。
その間に他の部下から拳銃を受け取ると、会長イスの背後の大きな窓ガラスに撃ち込んだ。
悲鳴のような音とともにガラスは割れ、地上40階からの猛烈な風が吹き込んできた。
「…捨てろ。処分だ」
「「「はい」」」
「やめぐ….ぅ…グェッ…」
もはや口は胃液を流すための蛇口と化していた。
吐き気と格闘している間にも、ゆっくり彼の肉体は持ち上げられる。
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