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バベルの塔
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− 笑いは涙へ、希望は塵へ −
ー 第二話:笑いは涙に、希望は塵に ー
「ねぇギラティナ、『緊急』ってどう書くんだっけ?」
「え….こ、こうだが…」
ギラティナは「何だいきなり」の表情で、翼の先で宙に「緊急」
の文字を描いた。その直後、思わず耳を押さえてしまうような大
音量で、ブザーが鳴り響いた。
ブーッ!! ブーッ!! ブーッ!!
『全隔壁を緊急閉鎖します。全職員は直ちに退避してください。』
「ねぇねぇギラティナ、『退避』ってどう書くの?」
「・・・・・・」
するとロンギヌスが恐ろしい形相でリビングに飛び込んできた。数秒
遅れてラティオスも入って来る。ゼェゼェと息を切らしているにも関
わらず、ロンギヌスは今起こっている事態、そしてバビロンの意向を
みんなに告げるのだった。
ーーーーーーー
「ええっ!? じゃあバビロンが迷子なのって…」
「あ〜、厳密には迷子じゃなくて行方不明です。一応、大人ですしね」
「結局は復讐なのね…..バイオリック社に対する」
「なんという事だ……...」
リビングを一斉に包み込む感傷。争い嫌いのレムリアを除いては、
皆バビロンの気持ちを肯定しているようだった。
「やっぱりクシャルダオラの子はクシャルダオラなんだよね〜」
「長ったらしいですね、それ」
「よし! じゃあ今度はバビロンの応援に…」
「待って!」
「ちょっと待った!!」
ロンギヌスが戦意の炎を燃えあがらせた瞬間、レムリアとギラティナ
が同時に声を張りあげた。
「……また、闘うのか?」
「え?」
「またこのリーグを離れ、幾人もの敵と闘うのか?」
「だ、だってバビロンは……俺らの大事な…」
「それでも!!! …..それでも、もう嫌なのだ….…もう…戦闘は…」
黒い折り紙が破れたような翼を、シュンと力なく垂らすギラティナ。
床に目を落とした彼の頬に、レムリアはそっと指を添えた。
「レムリア……」
「私も同じ意見よ。今まで誰も傷つかずに、戦況を越えてきたこと
が一度でもあった? あなた達はみんな強い、でも今度は……今度は
レベルが違う。バビロン以上の強さを持った人工竜を、彼らは何百
匹も備えているのよ!? 私達がバビロンにすら大苦戦したの、忘れ
たの!!?」
珍しく大きな声を出した為か、レムリアは小さく「ごめんなさい」
と呟いた。喋る隙を見つけたロンギヌスが、重い口をここぞとばかり
に開く。
「で、でも…!! このままじゃバビロンが危険だし、放っておくなんて…」
「私は前々から気になっていた….マスターは死を恐れないのか、
それとも死を知らないのか。何千人もの死者を見てきたが…....
チャンピオンとはいえ、普通の高校生が取るような行動じゃない」
ギラティナの言葉に貫かれ、ロンギヌスは凍りついた。「変人」を
指摘されるのは日常茶飯事だが、彼の口から言われるとまた違って
聞こえる。ギラティナは続けた。
「だから、私はマスターやカイオーガに惹かれたよ。自由奔放で、
喜怒哀楽で、マイペースで。二人とも私の宝物なんだ、だから….失
いたくない….」
「じゃあバビロンは失ってもい…!!」
「そうは言ってない! ただ一つ言わせてもらう、私の生来の仕事は、
死者を悼みあの世に送るであって、死者を増やすことじゃない!」
吐き捨てるようにそう言うと、ギラティナは深い溜め息とともに涙
を拭った。普段は冷静な彼の熱弁だけあって、その場にいた全員が
ゴクッと生唾を飲んだ。
・・・・・
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