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バベルの塔
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− 笑いは涙へ、希望は塵へ −
・・・
「…そっか。じゃあ居ていいよ」
「「…え?」」
「俺は命令も強制も、嫌いだからね」
病人のような声でそう言い放ち、ドアをぴしゃりと閉めて出て行くロ
ンギヌス。ラティオスは一瞬だけレムリアを見遣った後、同じくロン
ギヌスに続いた。カイオーガだけが、扉とギラティナ達の間にポツン
と立ち尽くしている。
「ぁぁん….えっと….ボクは…」
「カイオーガ….血が観たいのなら私を引き裂いていい!!!
私はお前を….失いたくない…」
歯を食い縛っても、涙を抑えることは出来ない。
「頼む、分かってくれ! 昔話で笑い合えるのは….もう、お前だけなんだ…」
・・・え?
「…ど、どういう意味……」
「今まで黙っていたが…お前を捜している間に風の噂で聞いた。
ルギアもゼクロムも、五年前にバイオリックに殺されて死んだと!!!」
ーー二人の間に流れていた時間が、電池の取れた時計のように止まった。
カイオーガは目を見開き、ギラティナは涙を呑んでいる。レムリアは会話
の内容が理解できないものの、幸福な報せではないのは勘づいていた。
ーーーーーーーそして・・・
「またまたぁw 冗談上手いんだからギラティナは」
「…!? いや、本当なんd…」
「どっちにしても僕は行くよ。バビロンを、ゼッタイ助けるんだ♪」
ニッと笑顔でそう宣言すると、踵を返してロンギヌス達と同じく部屋
を後にした。ギラティナは世界が崩壊すると知ったかのような、唖然
とした表情を浮かべていた。勿論、哀惜と悔しさに埋もれながら。
「あの、ルギアとゼクロムが誰なのかは知らないけど….あくま
で風の噂なんでしょう?だったら間違いって事も…」
「ハハ…..バイオリックの名は出さなかった方が良かったか…」
「えっ?」
限界を突破した悲しみが、ヒクヒクと頬を吊り上げる。何故か止め
ようもない笑いに、ギラティナは涙を滝のように溢れさせていた。
「私なのだ。あいつらの遺体を引きずって、冥界に連れていったのは…」
ーーーーーーー
「まったくギラティナもネタ考えてよねぇ〜? 旧友を勝手に殺し
ちゃダメだよ♪」
陽気なスキップ調子で廊下を進んでいるカイオーガ。ギラティナ
の冗談を嘲笑しながら、らんらんとロビーから外に出ようとした。
だが自動ドアが彼を感知する直前・・・・・・
ポロッ…
「えぁッ……」
ロビーの床にこぼれ落ちたのは、一滴の雫。
舐めればしょっぱいであろう、一滴の雫。
カイオーガの眼から漏れた、一滴の涙だった。
「だ、だって嘘だもん。証拠ないしね。バッカみたいだ…」
気を取り直してリーグを出ようとするが、再び視界がぼやける。
「目…目が痒いんだ….そうに決まってる….埃でも入ったんだよ….」
それでも涙は止まらない。ヒレでゴシゴシと擦っても、後から後
から染み出してくる。
「…う、嘘だよ♪ 嘘だ….大嘘……嘘っぱちだ…」
・・・・・・
出来る限りの現実否定はした。
出来る限りの我慢はした。
出来る限り、リビングからは離れた。よし、準備完了。
あとは・・・
「う……えぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁaaaaaaaaaaaaahhhhhhhh!!!!!!!」
ーーーーーあらん限りの、慟哭を。
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←<2011/10/13 20:15 ロンギヌス>
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