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バベルの塔
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− 道標 −
側まで歩き、カイオーガを天井付近の高さから見下ろす。
「ルギアが外で大声で泣いてるぞ。最後の挨拶ぐらいするべきだと思うが?」
「えっ……..し、知らないよそんなの…...…」
「…私の計算じゃ今日の午前11時40分に、カメラメモリの効果が尽きるんだがな」
カイオーガの眼が一瞬、時計の方に動いたのをバビロンは見逃さなかった。
某有名キャラクターの絵が付いたそれは、既に11時15分を示している。
ーーーーつまりあと25分で・・・
「…..フフ、まあ拗ねる方が好きならそれでもいい。
ただひとつ、言いたい事があるだけだ」
「…………なんだよ……」
「なぁに、実に単純明快なことだ」
ーーーーーーごめん。
カイオーガはギョッとした。
バビロンが謝罪の言葉を口にするのを初めて見た。
それも「悪かった」や「すまない」ではなく、性格上最も言い辛いであろう「ごめん」で。
「え………」
「今さら気づくのも情けないが….諸悪の根源は私だ。
バイオリックに敵対心を燃やすばかりで、結局は内心、お前やマスター達が助けに来るのを期待していた」
目を頻繁に瞬かせながら、声を喉から絞り出すバビロン。
プライドの高い彼が自分の非を認めるなど、カイオーガは欠片も思っていなかった。
原因不明だった怒りが、彼の「ごめん」の一言で潮のように引いていった。
「バビロンは……何で、あんな事したの…?」
「何をだ」
「急にバイオリック社に攻め込んで….命賭けの大富豪までして…」
「夢…..だからな」
「ユメ?」
「…そうだ。あれが私の生来の夢。
自我を与えられてからというもの、ずっとウィルスの開発に取り組んでいた」
「そんなにバイオリック社を潰したかったの…?」
「フフ….まあその理由は自分でも理解できないんだがな。
奴隷にされた復讐かもしれないし、単なる鬱憤晴らしかもしれない。
ただ最も確かなのは……」
バビロンは肩に貼り付いている取れかけた絆創膏を剥がし、クシャクシャと丸めてゴミ箱に放った。
「死にたくなかった…..というのが正直なところだ」
「えっ….死ぬ?」
「初期型にせよ現行機にせよ、人工竜の製造過程やDNAはバイオリックの特許だ。世界市場でも、その技術は諸刃の剣でな。
一体につき5000万円以上の高値で取引されているらしい」
「ごせ……」
これは紛れもない事実だった。
旧・バイオリック社がその市場を独占していたのも、人工竜に関するすべての利権が集中していたからだ。
会長や社長や幹部達は、さぞかしウハウハだったことだろう。
「そ、それで….?」
「…バビロンシリーズの寿命は10年と持たない。
だが死んでも内臓のサンプルやDNAは採取できる。
これがどういう意味か判ったか?」
「ううん…」
「もし私の寿命が来たとして、その死体には何が群がってくると思う?
ハエと一緒に大手企業の研究員達が、わずかな肉片を求めてわんさかと集うだろうな」
「あっ…!」
バイオリック社の繁栄を妬む他社にとって、人工竜の遺伝子さえあれば、あとは自社で何体でも製造できる。
そうなればバイオリックの地位は、坂道を転げ落ちる雪玉のように転落するだろう。
バイオリック社の代名詞だった人工竜が、他社からもドカドカ市場に放出されるからだ。
「じゃあそれを防ぐためにバイオリックは…..一匹狼の君を引き戻そうとしたの?」
「…確かにここに住み始めて一ヶ月は、脅迫メールがゴミのように届いていた。
最近ではそ
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