[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33
− 出港 −
他の観光客など、絶景をさえぎる障害物は一切ない。
自分に財産さえあれば、著名な風景画家を呼んで絵に描かせたいところだ。
「ねぇねぇマスター、先に潜っててもいいかな!!? 待ち切れないよー…」
「…駄目だ。迷子を捜すのってかなり骨が折れるんだぞ?」
彼が迷子になることを前提で話しているのは、勿論、前例があるからだ。
総出で出かけた巨大ショッピングモールで、見事に行方不明になったカイオーガ。
彼の捜索にはおよそ半日を費やし、結局買ったのはバビロンのヘッドホンだけだった。
バスをいくつも乗り継いで行っただけに、思い返せば今でも気が沈む。
「あ、あのときは…ちょっと興奮しちゃって…...」
お前の興奮の基準は、いったいどれだけ低く設定してあるんだ。
カイオーガは上目遣いにねだり続けてきたが、そんな手慣れた手法に屈する俺ではない。
さすがに何年も一緒に居ると、免疫が付いてしまったらしい。
「ムゥ……意地悪すると女の子にモテないぞッ!」
「よっ、余計なお世話だ」
結局カイオーガは降伏し、船がダイビングポイントに到達するのを待った。
それでも欲望と興奮が抑えられないのか、唸りながら甲板の中央でのたうち回る。
まだまだこいつも子供だな。
「大体、お前って海で産まれたんだろうが。
綺麗な海のひとつやふたつ、今までにあったろ?」
「….そりゃあ、出身は海だけどね。陸で過ごした時間の方がずっと多いんだもん」
『海王』の称号を持っておきながらそれでいいのか。
だがそれでも威厳を保つため、一応気が向いたときには海に帰っているらしい。
お前のどこに威厳があるんだ、と口にした直後、殺人級のボディーブローが飛んできたため、ロンギヌスは身を翻さなければならなかった。
「もお……ボクだって、パパが死んだらちゃんと政治やるよ。
その時にはマスターともお別れだね♪」
「えっ…」
「200年後ぐらいだけど」
その遥かに手前で、俺は空に光る星になっているに違いない。
というよりこんな危険な日常なら、80年も生きていれられれば上等だ。
「センッパァーイ!!! もうすぐッスから頑張ってくださいね〜!!」
ダークライが運転席から喚いた。
密集していた観光客は、既に見る影もなくなっていた。
さらなる沖を目指して泳いでいる男性を尻目に、濃い群青色の水域に船は停まった。明らかに深そうだ。
ミロカロスの指示を受け、留守番のギラティナ以外は金属製の巨大な酸素ボンベを背負った。
勿論、水中で生きられる彼女やカイオーガにボンベは必要ない。
全員の用意が出来たところで、ロンギヌスは軽い注意事項を述べる。まるで幼稚園の引率の先生になったような気分だ。
「いいな、絶対に遠くまで行かないこと。ダイビングってのは命懸けだからな」
「…初心者に言われても説得力ないです」
「そーだそーだ♪」
「……右に同じね」
「う、うるさい。
それとギラティナ、無いとは思うけど、手の届く範囲で誰かが溺れてたら助けてくれ。
触手で引っ張りあげるぐらいは……出来るよな」
「当然だ」
「よーし……じゃあ行くか」
ロンギヌスはチューブを咥えた。新品とはいえ、ゴムの味はやはり不快だ。
カイオーガが我先にと船首から飛びこむと、巨大な水柱が打ち上げた。
ダークライも彼を追うように後に続く。レムリアも、ラティオスに先導されながら飛び降りる。
「ミ…ミロカロスさん、行きましょうか」
「ふふ、おおきに」
ミロカロスの鎌首にさりげなく手を添えると、彼女はニコッと微笑みを咲かせた。
心臓が肋骨を痛い
[4]
← [5]
→
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS