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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− 白と黒 −
ーーロンギヌス失踪事件の片がつき、みんなが呑々とした時間を過ごす午後。
「バビロン……良かったら散歩にでも行かない? 私と」
「……は?」
レムリアは、丸々とした腹を上にして寝転ぶバビロンの元へと歩み
寄った。スーパーコンピュータの頭脳ですら計算外の発言に、バビ
ロンは口を半開きにして訊き返す。彼女はさっきと同じ台詞を繰り
返した。
「フフ、何故私なんだ」
「あら迷惑だった? お気に召さないなら取り消してもいいんだけど」
「……別に。丁度、雑務も終わったんでね」
雑務といっても彼の場合、ロンギヌスが猛スピードで書いた帳簿の
ミス確認ぐらいだ。バビロンは腹筋に力を込めて起き上がると、天
井すれすれの高さから部屋を見渡した。カイオーガはラティオスと
将棋を指しており、彼が見たところ、若干ラティオスが優勢のよう
だ。ロンギヌスはいつの間にか姿を消している。
「まぁ、無断外出で構わないか。おい金ピカ」
「…………」
「分かった分かった。それじゃあギラティナ先輩」
「何だ、どこか出掛けるのか?」
バビロンはレムリアの方向に親指を向けた。
「こいつがどうしても私と二人になりたいらしいんでね。マスター
が帰ったら伝えてくれ」
「……他人に物事を頼むときにはそれ相当の……」
「はいはい、何とかお願いしますよ、先輩」
礼儀に関するギラティナの演説が始まるのを見越したバビロンは、
早々にレムリアを連れて部屋を出た。引き戸をぴしゃりと閉め、彼
女の右手を引いて歩きだす。真新しい木の廊下が、彼らの重みでミ
シミシと唸った。
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思考パターンがロンギヌスに似たのか、彼らの向かった先は遊戯室
だった。扉を抜けた瞬間に押し寄せる熱気に、レムリアは思わず息
を呑む。「捕食者」の名がよく似合う野獣のようなモンスター達が、
種族の壁を越えてゲームに没頭していた。それこそ親睦が目的の緩
いカードゲームから、食うか食われるかを賭けた博打まで。その結
果としてか、室内には明らかに腹に膨らみを持った者が何匹もいた。
さらに混雑の中から幾度となく、ゴッキュンという強烈な音が漏れ
聞こえていた。
「……まるでカジノだな、驚いた」
「ある意味、本物のカジノより迫力あるかもね」
「"3万円以内なら現金を賭けることも可能"……か。どうする?」
「遠慮するわ。そんなにお金無いし……それに賭博はあまりすきじゃないの」
「フフ……まあ女王様がそう仰るんなら仕方ない」
「だ、誰が女王よ!」
「YOU」
バビロンは先程よりも力を込めて彼女を手を掴んだ。ほぼ満席のル
ーレットやバカラ台の合間を、縫うようにくぐり抜けていく。
一方レムリアは、彼の歩速についていくだけで精一杯の様子だ。
「捜すのは御免なんでね。はぐれたら自力で帰ってもらうぞ」
「わ、分かったわよ……」
その言葉に気圧され、レムリアも彼の手をギュッと握り直した。
まるでカイロを握り込んだように、バビロンの熱い体温がじんじ
んと伝わってくる。力むあまり、彼の血の流れさえも感じられそ
うだった。
三十歩は歩いただろうか、遊戯室の最も奥側の壁にたどり着いた。
竜の脚でそれだけ掛かるのだから、この遊戯室も相当広い。壁際
には竜や巨大ポケモン用の重厚なベンチが置かれ、誰かが座って
くれるのを待っていた。
「……とりあえず座りましょうか。今は混雑してるみたいだし」
「フフ……仰せの通りに」
「だからその喋り方はやめてって言ってるでしょ!!」
しかしそのと
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