[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33
− 謝罪 −
「あ、ありがとうございました!! ご親切に助けて頂きまして……何とお礼を言ったらいいのか……」
「えへへ……別にいいよ、趣味だから♪」
カイオーガは目の前で深々と頭を下げる女性に対し、照れ臭そうに後頭部にヒレを回した。その際に僅かに背筋を伸ばしたことによって、彼の腹に浮かぶ二つの巨大な膨らみがより強調される。女性の目はそれとカイオーガの顔を交互に行き来していたが、彼自身は毛ほども気には留めていないようだ。時たま腹の底から響いてくる、断末魔のような唸り声にさえ耳を傾けない。
「本当にありがとうございました。貴方が来なかったら……私、今頃……」
「いいっていいって。女の人には優しくしなさいってパパが言ってたんだ」
何故この女性が安堵の溜め息をつき、カイオーガを感謝の対象として見ているのか。実は5分前、彼女はこの場で、男2人組からむしろ誘拐に近いナンパを受けていたのだ。それをたまたまこの遊戯室に訪れていたカイオーガに助けられた、という訳だ。カイオーガは慈悲も酌量もないまま男たちを丸呑みにし、今に至っている。
お礼の口を休めない女性をヒレを振って見送った後、カイオーガはふと自分の腹に目を落とした。二つの膨らみのうち一つは完全に沈黙していたが、もう一方はまだ頑固に抵抗を続けている。カイオーガは幾何学模様が美しいヒレをそこに押しつけ、ギュウッと身体の内側に押し込んだ。するとどうだろう。まるでゴム毬から空気が抜けていくかのように、徐々に膨らみが小さくなっていく。
ほんの数十秒後には、カイオーガはまるで元の大きさに戻った腹をスリスリと撫でていた。
「へへへ……男っておバカさんだよね〜、よく考えもしないで女の子に手を出すなんてさ♪」
カイオーガは自分に性別が無いことを改めて実感しながら、シャチホコのように背を大きく反らして伸びをする。そのとき上下が反転した彼の視界の中に、見慣れた黒い竜の姿が飛び込んできた。
「あっ、バビロン見っけた♪」
=============
バビロンが青年とのギャンブルを承諾してからというもの、レムリアの自責の念は増幅するばかりだった。「惚れ薬」と銘打った得体の知れない薬に惑わされ、彼をこんな事態に巻き込んでしまった。青年と手を繋ぐことを強要されている右手が、ぷるぷると悔しさに震える。
「それじゃあ行こうか。闘いの場に」
バビロンはしかめっ面のまま青年の言葉に従った。先頭に手を握り合ったレムリアと青年が並んで歩き、その後ろにバビロンと、青年の手持ちであるシュバルゴが続く。シュバルゴの両手から生えている太い槍の先端は、両方ともバビロンの背中に当てられている。恐らく彼らは、バビロンがレムリアの強奪に走ることを警戒しているのだろう。
しかしその時、その場の誰もが予想外の出来事が起こった。聞き慣れた明るい声の響きに、レムリアとバビロンは同時に振り返る。寝室でラティオスとチェスを楽しんでいた筈のカイオーガが、ヒレを振りながら駆け寄ってくるところだった。二匹は赤の他人を装おうとしたが、彼は無邪気な大声でバビロンの名前を呼んだ。
「バービーロン♪ やっぱりここに居たんだね。また何か賭けようとしてたんでしょ〜!!」
「……馬鹿、部屋に戻れ!!」
「ほえっ……ど、どうして?」
強引に出口まで吹き飛ばそうと拳を固めたバビロンだったが、時すでに遅し、青年がレムリアの手を引いたまま近づいてきた。不審そうな目でカイオーガを見やった後、サラッと顎に触れながら問いかける。
「へぇ……もしかして君、この黒い竜の友達か
[5]
→
▼作者専用
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS