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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− 敗北を知らぬ者 −
い紫色の液体にまとわり付かれ、全身をピク
ピクと痙攣させている。
そんな彼を尻目に、カイオーガはヒレの先に残った毒液をペ
ロリと舐め取った。
「いや〜、ゴメンゴメン。こいつトゲトゲしてるからどうし
ても呑み込めなくってさぁ……つい♪」
「そ、そんな……シュバルゴ……」
「ちゃーんと生きてるから大丈夫だよ。死んじゃう量の半分
くらいしか毒は浴びせてないし。それにこいつ、鋼タイプだしね♪」
タイプの壁を超えて通用するカイオーガの毒素に恐れをなし
たのか、青年の顔色はますます悪くなった。彼の後方は壁に、
右は巨大なゲーム機に遮られ、前と左はバビロンの胴と壁に
突き立てられた腕で塞がれている。おまけにそのバビロンの
背後には、自在に神経毒を操るカイオーガが待ち構えている。
まさに四面楚歌だった。
「……さあ、話を元に戻すとしようか。このまま私の勝ちで終
わらせたいのは山々なんだが、生憎まだ2対2……決着はついて
いない。そこで最終戦をやってお前が勝ったなら、レムリアは
約束どおり差し出してやる。だがもしその逆……私が勝った暁
には……」
バビロンは壁に手を付けたまま多少前のめりに体を倒し、胃液
がコポコポと唸る腹を彼に押し付けた。さらに恐怖心を煽るた
め、故意に口元から涎を滴らせる。粘っこい唾液の糸はバビロ
ンの狙いどおり、青年の頬にピチャッと着地した。
「……それが嫌なら、今ここで負けを認めることだな。今なら
まだ命だけは保証しよう。まあ……レムリアを誘拐した罪はし
っかり償ってもらうが……」
「ちょ、調子に乗るな……!!」
「フフ、調子に乗った竜がどんな行動を取るか……冥土の土産
に見せてやってもいいんだが?」
目の前で胃袋の音や滴る涎をチラつかせられては、それが何を
意味するのか嫌でも理解してしまう。青年はついに屈服し、自
らの敗北を認める言葉を口にした。バビロンは満足そうに笑い
を含み、彼のほっそりした肩を両側から押さえつけた。
「な……ちょ、ちょっと待て……!!」
「……どうした。まさかとは思うが……誰の手で喰われるのか
選ばせてもらえる、とでも思っていたのか?」
「……っ……」
これほど図星が顔に出る人間が他にいるのだろうか。バビロン
は狼狽する青年のアゴを持ち、クイッと無理やり目を合わせさ
せた。彼の呼吸が不規則に荒くなっているのが分かる。
「……甘えるな。私が勝った以上、お前は何の権利も選択肢も
ない敗者だ」
「そんなアコギなこと……」
「ほう……よく言えたもんだ。私はただ、お前が勝ったときに
私に言うであろうセリフを再現しただけだが?」
青年はまだ何かクレームを付けたかったようだが、バビロンは
口を鷲掴みにしてそれを制した。竜の圧倒的な握力に、青年は
唸りとも悲鳴ともつかない声を上げる。どうやらアゴの骨がミ
シミシと軋んでいるようだ。
「フフ……安心しろ、ちゃんと私なりに手加減はしてやる」
「………私なりに、な」
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←<2012/05/25 18:39 ロンギヌス>
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