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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− UTOPIA −
ってか……?)」
考えてみればそれも悪い事では無い。筋骨隆々のプロレスラ
ーに全身の骨を折られるのと、こんな甘美で色っぽいポケモ
ンに同じ仕打ちを受けるのとでは全く違う。
およそ30秒間隔で与えられる酸素のおこぼれを拾いながら、
ふとロンギヌスは理想の死に方というものを考えた。不思議
なことに、今は『この』ミロカロスの血肉となること以外、
どんな理想的な死もナンセンスに思えてくる。
「ミ、ミロカロスさ……良かったらこのまま……た、食べて
くれたりなんか……」
「……これでは満足できない、と?」
「そ、そうじゃな……ふぉぶ……っぷぉ……!!」
少しストレートに頼み過ぎたのかもしれない。ミロカロスは
全身の筋肉を引き締めた上で、ギュッともう一度とぐろを巻
き直した。傍から見れば、まるで細枝に巨大なロープが隙間
なく巻きついているような状態だ。先ほどの倍以上の密着感
と圧迫感、そして噴き出る快感に、ロンギヌスは喉の奥から
掠れた喘ぎを漏らした。
「ふふっ……軽い冗談どす。お客さんの切実な望みとあらば、
この見習い仲居のミロカロス、喜んで一肌脱いで差しあげまし
ょう」
「マ、マジっすk……」
「お騙り♪」
「……っあ……」
ミロカロスはそっと笑みを咲かせ、一気にロンギヌスの頭にか
ぶり付いた。彼女自身もその瞬間を待ち侘びていたのか、既に
口内は唾液の膜に包まれている。咥えられてからわずか数秒で、
ロンギヌスの頭は一段と柔らかい喉に差し掛かった。
「え……もう呑んじゃうのか……」
「うちは蛇ですさかい、ドラゴンのような舌芸は出来んのです。
その代わり中で嫌っちゅうほど嬲ってあげますけん、堪えてく
ださいや」
その『中』を見せつけようとでも言うのか、喉の筋肉がくぷぁ
……と粘液を引きながら大きな穴を形成する。丁度、人間の頭
部がすっぽり収まるほどの直径だ。蛇は顎や喉の大きさをゴム
のようにコントロール出来る、といった生物図鑑の説明文をロ
ンギヌスはふと思い出した。
ゴキュっ……ぐぅ……っぷぷぷ……
呑み込まれたことを示す音は、竜やオオカミと比べると非常に
微かなものだった。だが一方、リング状の喉肉に締め上げられ
る時間はそれらよりもずっと長い。嚥下される感覚を長きに渡
って楽しめることこそ、蛇に呑まれる醍醐味だとロンギヌスは
思った。
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ハグッ……あがっ……ごぽっ……
「んっ……ごちそうさまでした」
靴下の消えた足先を完全に呑み込み、ミロカロスは口を閉じた。
喉から腹にかけての筋肉は慌ただしく蠕動し、ロンギヌスの肢
体を奥へ押し込もうとしている。その様子は、ミロカロス自身
の目でも確認できる。何も力を加えずとも、消化管が勝手に動
いてくれる感覚が彼女は好きだった。
「そろそろ、ええでしょうかね……」
流石にいつまでも廊下に横たわっている訳にはいかない。ミロ
カロスは腹から上をヌッと持ち上げた。これが普段、彼女が移
動するときに取っている姿勢だ。
「ふふ……っ……」
そんな体勢を取ったのが原因なのだろう。美しい曲線を描いて
膨らんだ腹が、床に当たって若干つぶれている。本来なら獲物
の消化を早める効果があるが、今日は事情が違う。ミロカロス
は上半身をゆさゆさと揺らし、わざとそれに体重を掛けた。
ゴポゴポと体液が流動する音、そしてロンギヌスの弱々しい呻
き声が漏れ聞こえてくる。
「あの……すいません。従業員の方ですよね? 101号室はどっち
に行ったら……」
突如、長い金
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