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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− これが俺の日常 −
「チェックアウトも済ませましたし……もう後腐れ無いです
よね。ギラティナさんも忘れ物とかありませんか?」
「……我が身以外は何も持ってきていない。大丈夫だ」
「あっ、マスター帰ってきたよ!! お〜い♪」
千里も万里も向こうの地平線が、西に傾いた太陽の下半分を
覆い隠している。真横から射すオレンジ色の光が、旅館を飛
び出してくるロンギヌスの横顔を眩く照らした。既にメンバ
ー全員が帰り支度を整え、縮小化用のゲートもくぐって時間
を持て余している。さっきまで人間1人を呑むのがやっとだっ
たカイオーガも、今や重機のように巨大な身で砂浜を押しつ
ぶしていた。
「おっそいよぉ〜。何分待ったと思ってるのさ」
「い、いや〜悪い悪い!! ついミロカロスさんの腹の中でうた
た寝しちゃってさ……これが気持ち良いのなんのって。
なんと、最後には子守唄まで唄ってくれたんだぞ?」
「ふぅーん……」
「何だその軽蔑したような目は」
「軽蔑なんかしてないもーん。バカにしてるんだもーん」
「同義だろ」
靴の中に入った砂利を除去しようと、片脚立ちになりながら
ロンギヌスは言った。その直後、イタズラ心の芽生えたカイ
オーガが、彼の背中をドンと舌先で押す。その結果砂浜に突
っ伏すだけならまだ良かったのだが、どうやらミロカロスの
胃粘液がまだ完全に乾いていなかったらしい。ロンギヌスは
メンバー環視の中、前半身に大量の砂がくっ付いた滑稽な姿
となった。
「ぶはッ……て、てんめ……!! あっ、口に入った……っ!!」
「ギラティナぁ、マスターが僕のせいにしてくる……」
「……マスター、自己の責任を他人に押し付けるのは良くない。
理性を持つ生き物として、恥ずべき行為だとは思わないか?」
「ちょ……お前も決定的な瞬間を見てただろうが!!!」
愛しのカイオーガのためとあらば、事実さえも隠蔽すること
を厭わないようだ。何よりも正義感の強い彼を曲げさせる力
を持ったカイオーガに、ロンギヌスは畏怖の念を抱いた。
ふと、世界を裏から支配する魔王のイメージがぴたりと重なった。
「さぁて……帰るかそろそろ。思い残すことも無いだろ」
「「「うん」」」
誰もが首を縦に振った。その時ーーー。
前触れもなく、ロンギヌスを呼ぶ声が背後から飛んできた。
メンバーが一度に振り返る。
「あっ、ミロカロスさん……」
「……と、ダークライ……ぅぅ……」
ダークライの存在を目にしたカイオーガは、即座にバス停に
向かおうと踵を返した。だがそれが大きな過ちであることに、
彼は気付けない。自分に溺愛している者に背中を見せるなど、
崖から飛び降りる自殺に近いのだ。
「んセンッッッパァァイ!!! 感動の再会シーンッスね!!!」
「は、速っ……!!」
新幹線のような速度でタックルされ、カイオーガは仰向けに
押し倒された。その恰幅のいい白い胸の上を占拠され、やめ
てやめてと唸る。
「ハァ……やっぱり先輩の匂いを嗅ぐと胸が高鳴るッス。香
水作ってもいいッスかね?」
「良い訳ないでしょ……さっさと降りてってば!!」
「あ、ムキになった♪」
マゾヒストである彼を不用意に食ったり縛り上げては、余計
に刺激を与えてしまうだけだ。カイオーガは目でSOSをギラ
ティナに送る。が……所詮はそれも無駄に終わった。ダーク
ライから「ムカデ」呼ばわりされてからというもの、ギラテ
ィナは彼を嫌悪するようになっていた。肌をくっ付けること
は勿論、会話をすることさえ出来ないほどに。
ダークライの独壇場だ
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