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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
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− 安眠は遠いよ −
「あっ…そ、そうだな…悪い…」
言葉がさっきより辛辣になっている。どうやらあまり触れてはいけない領域らしい。
ロンギヌスは話を切り上げると、好奇心を胸の奥に沈めた。
「さて….すまないな、せっかくの旅行なのに暗い話ばかりで。
どうも明るい話は出来ない性分らしい」
「まあまあw それもお前の良いとこだ」
「….優しいのだな、そういうところだけは」
「だけって言うな。さぁて….そろそろ寝るかな…」
ロンギヌスはよっこらせと立ち上がり、大きな伸びをしてから踵を返した。
視界を覆い尽くす闇を前に、ガクンと肩を落とす。自分の布団は確か入り口側にあった。
つまりそこに横になるためには、ギラティナを除いた四名が寝ているこのスペースを突破する必要がある。
もしバビロンの顔など踏んづけでもすれば、生命が危うい。
「行きより帰りの方が難しいとはね……」
幸い、レムリアを間に挟んだ、バビロンとラティオスの寝床はくぐり抜けることが出来た。
ラティオスの画鋲のような爪を踏んづけた際は絶叫しかけたが、熟睡中の彼が目を覚ますことは無かった。
そして最後の関門、きっと目の前に寝ているであろうカイオーガの頭上で足を上げる。
・・・グニュ。
ーーーん?
足裏に妙な感覚が走った。蒟蒻ゼリーを踏みつけたような感触だった。
ーーーまさか、カイオーガの舌でも踏んでしまったのだろうか。
予想が全く掴めないままで、目線をおそるおそる自分の足へ移す。蒟蒻ゼリーの正体は明々白々だった。
ぷるんとした潤いのみで形成された牙と、リアリティのない玩具のような目。
ロンギヌスが足裏で踏んだのは、そんな大蛇を思わせるような龍の身体。
向こうが透けて見えるほどの透明感に満ちた、カイオーガの作り出した海龍だった。
「なっ……!!」
海龍は、本物の東洋の龍とそう変わらない迫力で喉を鳴らした。
カイオーガが自衛のために置いたのか、それともロンギヌスを狙って作ったのかは不明だが、少なくとも今は温厚そうではない。
寝ているところを足蹴にされ、不穏なオーラを匂わせていた。
ロンギヌスは舌を打ち、その隣を闇雲に突っ切ろうとした。
だが見切られたような俊敏さで、案の定、長い蛇体に容易く絡め取られる。
手足に効果的に巻きつかれ、数秒後には最低限の呼吸以外は身動きが取れなくなっていた。
「う……ぉぉ…っ……ぅ…」
ぬちゅぁ、と口が開く音が耳に入った。どうやらカイオーガの警護どころか、不届き者の処理までこなしてしまうらしい。
すぐさま頭から咥え込まれる。心臓という器官が無いためか、吐息らしきものは一切感じられなかった。
とはいえ、多量の水っぽい唾液が顔に滴り落ちる。それを拭き取ろうと顔に手を掛けることさえ、巻き付かれていては叶わなかった。
ズムッ……ズムッ…ングチュ…むにゅ……
「ちょっt……タ、タンマ…!!」
無駄だと分かっていても自然に声が漏れた。
呑み込むスピードに容赦はまるで無かった。ぷにぷにと艶のある喉に頭を押し込まれたときには、間一髪で溺れかけた。
「ぅ……カイオg…」
ゴクリ・・・!!
足が床を離れるのを感じた。垂直に近い食道の中を、真っ逆さまに沈下していくのが分かる。
透明な肉壁の向こうに、月明かりとギラティナの影がぼんやりと映った。
しかし大声でSOSを求めてみたものの、防音性抜群のウォーターチューブが間にあっては、無意味も同然だった。
とうとう食道を通りきり、胃袋らしき空間に到達する。視界は口内や食道とほとんど変わらなかったが、密着する胃
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