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狼と狐のち日常
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− 『ソファで寝るか…… 』 −
時刻は12時。
かれこれ、3時間も読書していたらしい。
10時程からはフラウも家事を終え、自分の自由時間に入り
僕と一緒に読書に勤しんでいた。
「ふわぁ……」
流石に疲労が溜まっているようで脳が酸素を求め、
命令を受けた体が欠伸を起こす。
「マスター、そろそろ床に就いたほうがよろしいのでは?」
「……そうだね、でも……ベッドが無いからここで寝るよ」
「失言、申し訳ありません」
あっ、と自分の言葉に気付いたフラウはすぐに頭を垂れた。
椛が悪いんだけどね。
「あっ、フラウこれ受け取ってくれる?」
と、僕は机に置いていた小さな袋からあるものを取り出す。
それは城下町で出会った竜人から受け取った……あの髪留めだった。
金を主軸に作られ、そして大粒のルビーが施された髪留め。
「!? ま、マスターどこでこれを!?」
「え、あ、城下町で出会った竜人から……」
読書していた本を机に投げ飛ばし、物凄い剣幕で
目前にあのフラウが肉迫した。
「これはフランバージュと言う国の王女が持つ事を許される秘宝ですよ……」
「ええっ!? ひ、秘宝なの?」
……困ったなぁ。
迷惑料だとか言って渡してくるものだから、そんな物とは思わなかった。
金をベースに大粒のルビーだから高価なものなのは想像に難くないが
まさか、秘宝とは。
「ということはルーテル王女が城下町にいらっしゃったのですか……」
「あ、名前教えてないよ?」
確かに、あの竜人は自身を王女。
王女ルーテル=F=レッドマーズと名乗った。
しかし、フラウが名を言うまで僕はその名を口にしていない。
「一度、助けて頂きました。そのお礼でこちらにくるまでは、王女の秘書を務めておりました……」
「あ、なるほど……」
「その時も王女はこの髪飾りを着用されていました」
知人であるのは初耳であった。
髪飾りをプレゼントはできないな……
「フランバージュでは……王女に魔術を教えて頂き、シャオン様に刀を教えて頂きました」
普段は大人しく、働き屋さんなフラウだが
今言った通りに刀の扱いは達人級であり、魔術も操れる。
下手すれば、菫、椛、ソル、ガレイドも討伐する事すら可能だ。
だから、彼女だけは怒らしてはいけないのだ。
……城下町の衛兵はフラウからすれば雑魚に等しい。
「この髪飾りを私が……?」
「うん……嫌なら返しても良いと思う」
「いえ、有り難く頂きます……」
頬を紅潮させ、恥ずかしそうに身を捩った。
頭から腰まで垂れる黄を含んだ白の長髪を束ね、
項辺りでその髪飾りで留める。
「ど、どうですか……?」
「似合うけど……勿体ないなぁ」
折角の髪飾りに可愛い顔。
髪飾りを後ろにするのは勿体ない。
気付けばソファから腰を上げ、フラウに近寄る。
そして、背面の髪留めを取り正面に廻る。
前に垂れる長髪を7:3に分け、3の方に斜め下から
掬い上げる様にして髪飾りを施した。
「……うん。こっちのほうが可愛いよ」
「ぁっ////」
言葉なのか、近さなのか
どっちに反応したのかは分からないが
紅潮した頬がさらに赤く染まり、上ずった声が零れた。
「ままま……マスターっ、ち、近いですっ////」
「あ、ごめんごめん……」
小さな謝罪を入れ、僕はソファに戻る。
腰を降ろして、再度本を……
「お、お礼をしないといけませんね」
「あ、いいよお礼なんて」
「明日の夕食はご馳走を作ります、それと、今日は私のベッドでお眠りください。ソファで私が寝ます」
……言い出したらフラウは聞かないからなぁ。
取り敢えず、ご好意に甘えるとしよう
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