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狼と狐のち日常
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− 『菜園の手入れでもしようかな』 −
雲一つない晴天。
菜園を弄るには、都合のいい天気だ。
育てている作物は
じゃがいも、人参、玉葱、葱、キャベツ、レタス
トマト、トウモロコシ……とにかくたくさん。
規模は小さいが、どこぞの農家とも言える。
麦わら帽子、長靴、軍手を装備し
完全に農家に服装を整え、作業に取りかかる。
「取り敢えず……空いたスペースの土を……」
この辺の土は非常に肥えている。
しかし、有能な成分を含んでいる土は深くに沈んでいた。
そのため、作物を育てる為にはその土を上に掘り出す必要があるのだ。
「それが……キツいんだよね」
再度言うが、その土は深い。
まずは上の土を掘り起こし、下層にある肥えた土を掘り上げるのだが……
深い。とにかく深い。
さらに下層に近づくにつれ、土が湿気を含み
ずしっ、と重くなっていく為に質が悪い。
「……時間はあるから……ゆっくりやっていこうかな」
と、零したときだった。
「ここにおったか、東雲」
「あ、菫……」
黒の巨躯がぬっ、と目前に現れる。
菫は僕との距離をすぐに詰め、やや眉間に皺を寄せ
「浮気ばかりしおって……本当に喰い殺すぞ……」
「ええっ!? 浮気なんてしてないよ!? フラウが隣に来ただけじゃないか」
「ぬ、主と言う奴は! グルルルルッ!」
「あぁ、ごめんごめんっ! 僕が悪かったから!」
何やら殺気等、ありとあらゆる負の感情を剥き出しにし
牙さえもカタカタ震わせ始める菫。
このままでは確実にお墓に埋められそうなので
どうにか、宥める。
「今回は特別に赦してやるかえ……」
「はいはい、ごめんごめん……」
「今度やったら、堕としてぐちゃぐちゃにしてやるからの!」
堕とされて、ぐちゃぐちゃに……
あぁ、考えたくもない……
「……畑の手入れかえ?」
「うん、そうだよ。土の掘り変えしてるんだけど、土が硬い上に重いんだよね……」
「人の手には辛そうじゃの、ほれ♪」
菫が地面に優しく、前肢を添えた。
すると、菜園の空いたスペースの土が舞い上がった。
極太のツタが大地を突き上げる。
……これなら土を混ぜて入れ直すだけで済みそうだ。
「菫、何したの?」
「儂の妖力でツタを肥大化させただけじゃ♪」
「あ、そうなんだ……ありがと♪」
「礼は弾ませてもらうぞ?」
頷きかけた首をどうにか留め、菫の表情を窺う事無く
スコップを手に、土を掻き始める。
「……頂きます♪」
<2012/04/01 21:38 セイル>
▼作者専用
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