[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
狼と狐のち日常
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53
54 55
− その為にも……刀をっ! −
王女様の行きつけとでも言える喫茶店の入口隣。
そこにシャオン様は何時もの様に腕を組み、壁に凭れていた。
失われた左目は相変わらず、右もまた瞼は降りていた。
「遅かったな、ヒスイ」
「ルーテル王女とヴィクス様は?」
眠っていたようでは無かった。
ボクがそう尋ねるとヴィクス様は声に出さず、顎で店を指し示した。
2人は店内にいると言う事だ。
そして……”遅かったな”?
「馬鹿でしよりは、お前のほうがいいがな」
言葉と言動から、どうやらボクが城下町に訪れている事と
シャオン様を探していたのは察しているようだった。
特に用件を示唆する様な言動は見られない為に、ボクはシャオン様を詮索する。
艶やかな銀毛に異変は見られず、方眸に広がる大空にも曇りは無い。
腰にも愛刀”終咲”が携えられている。
そして、もう一振り……見慣れた刀も携えられていた。
その小さな発見に気付いた様にシャオン様が口を開いた。
「これが必要なんだろ? ヒスイ」
「はい……」
小さく頷いた。
シャオン様は腰帯から”蒼華水蓮”を引き抜くと、ボクに向かって放り投げた。
不規則な放物線を描いてボクに向かって落下する業物。
シンプルかつ精錬された淡い蒼色の鞘から
水晶の様に水色に透ける刀身に走る一条の紅。
極限までに薄く鍛えられた金剛石は日光を遮る事なく、地面に光を透過させていた。
「その刀はやっぱ、お前にしか似合わねぇよ」
「……有り難う御座います、シャオン様」
何故、連絡も無しにシャオン様がボクの愛刀を持っていたのか、理由は知り得ないけれど
たった今、ここで愛刀を取り戻せたのは正直嬉しかった。
「ほら、早く戻ってやったらどうだ?」
「……シャオン様はお見通しなのですね」
刀といい、マスターの入院といいボクの落ち着かない心を見透かした様に
行動の迷いを示唆する様に言の葉を紡ぐ。
ボクは刀を片手に深く頭を下げた後、病院に向かったー
<2012/05/17 20:54 セイル>
▼作者専用
--------------------
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS