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こねくた
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− 七月の某日 プロローグ −
人間という生き物は、自分と少しでも違う物を嫌ったりするものなので、独創的だったり他人とはズレた常識などはほとんどの人に受け入れられないものである。
僕も他人には通用しない常識を持っていて、しかし今は訳あってその事は僕一人の秘密にしている。
人間という生き物は、なんて身勝手なんだろう。
梅雨になるとお天道様が恋しくなるが、梅雨が過ぎ去りセミが五年の歳月を経て地中からゾンビのようにズボッと「こんにちは」する頃になると、太陽も憎むべき存在となってくる。
これだから、僕を含めた人間は身勝手なんだ。
今の時刻は午前十一時三十分。ちょうど外で真上を見上げると太陽が「貴様らなんぞ我にひれ伏すがいい! フハハハハ」などとギラギラと叫んでいる。……気がする。
うるさくて暑っ苦しい太陽の声が聞こえない貴方は耳鼻科で耳の異常を受診する事をお勧めします。
といっても……
「家でクーラー効かして立てこもってる帰宅部の僕がそんな事考えるのもなんだけどね」
家の自室で独りごちた。
正直、炎天下の下で無駄な情熱を燃やす運動系のクラブや蒸し暑い部室にこもる文化、芸術系のクラブに入らなかったのはただ単にメンドくさいし疲れるからだろ、なんて言われるのは心外だし無論誤解だが、今の自分の状況を考えると反論はできないだろう。
それほどに、僕はだらけきっていた。
だから夏休みに入ってからというもの、腐れ縁繋がりの僕の唯一の友達は部活に専念しているため会えないし、映画でも見に行こうとしてもクーラー中毒の僕は全く外に出ることができないでいた。
痩せ型でルックスは中の上だけど根暗で友達作れない自宅警備員の誕生。である。
しっかしこんなことを他の人が聞いたら、違和感や疑問をすっ飛ばして頭の上に疑問符が十個くらい生じるかもしれないが、友達ができないというより人間の友達が居なくても人間じゃない友達が居るから十分なのである。
といっても、大体は一期一会の出会いなのだが……
「ホント嫌になるよ。人付き合いが苦手な上に、まさに自由にやりたい放題の夢の国でいろんな出会いが起こるから現実で友達を作る気にもならないや」
畳の上でごろんと寝転んだ。
「今日は、また誰かに会えるかな……?」
最後にそう呟いて、僕はお昼寝モードに突入した。
友達なんか作らなくてもいい。
正直こんな感性豊かな能力無い方が僕のためにも良かったのかもしれない。そう自分自身で思っていながらも、今日も現実から夢へと逃避する。
そう、比喩などではなく、まさに自由にやりたい放題の夢の国へ。
■作者メッセージ
ここからが、一応本編となります。
<2012/09/19 22:28 テルヒコ>
▼作者専用
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