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舟の向こう
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「なにさ…みんなキライだ!」
耐えきれなくて、ボクは家を飛び出した
後ろから聞こえるマスターのこえにも耳貸さず、いつもと変わらない風景の中を、空切って走った
飛び出たところで行くあてもないから、とりあえず海へ…自分の生まれた海へと走った
「はぁ…はぁ…」
目前にひろい海をおいて、ボクは荒い息を吐いた
来てもなにもない、そんなの絶対わかってる
でも突然、体が海にいけっていってたんだ
理由は分からないよ?
でも…いざ来てみれば…潮風が気持ちいいや。
最後にこの空気吸ったのはいつだろう…
なにもない、一人っきりの世界だと思ったのに、視界の端にぽつんとたたずむ、黒い「もの」があった。
「もの」はボクにスタスタと近づき、ひざまづいた
「お待ちしておりました」
「きみ…だぁれ?」
「あなたの望みを叶える、あなたの影です」
「ふーん」
「さっそくですが、舟をご用意しました」
「ふね?」
「はい、こちらへどうぞ」
頼んでなんかいない。その「もの」が勝手に用意してくれた舟は、とても小さかった。ちょっと大きめのボート?
「こんなの乗れないよ 小さすぎるもん」
「のれますよきっと。お乗りなさい。」
「本当?」
「はい」
「どこへいくの?」
「先へ…向こうへ」
「なにがあるの?」
「さあ」
好奇心がをさわぐ中で、ボクは舟に手をかけ、勢いよく乗りこんだ。
「の…のれ…るんだ」
「ふふ…では私も失礼します」
「もの」は向かいに座り、木のオールを手にした。
「あ…お金は?」
「もう頂いています…気になさらずに」
舟はゆっくり動きだし、海辺の岸を離れた
<2011/05/15 15:25 ロンギヌス>
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