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光を広げる輝き
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朝食の争奪戦を終えて、バクフーンとイーブイは外に出た。
珍しく、バンギラスは後片付けをしている。
……正直気味が悪い。
「なんだその目は」
こちらの目線に気がついたらしいバンギラスは、キッとこちらを睨んで小さく言った。
「あまり余計なことは企むなよ?」
「ご心配なく〜」
いつにもなく激しい棒読み。
どうやら“さっさと行け”ということらしい。
横目でバンギラスを睨みながら、バクフーンは先に駆け出していたイーブイを追ったのだった。
「こうやって二人で外に出るのも久しぶりだね」
「あぁ、そうだったな」
少し赤みを帯びてきた木々の葉を見ながらバクフーンは答えた。
そろそろ紅葉が見られる季節だろう。その時までには、何とか森が静かになればいいものだが。
この間見た、あの巨大な足跡。あれはこの辺りに住む動物のものではない。
見たことのないものは大抵危険なのだ。
最悪、出くわす可能性だってある。
その時は、何とかイーブイだけでも助けなくてはいけない。
「バクフーン、聞いてる?」
その声ではっとして顔を上げると、イーブイが不安そうな目でこちらを見ていた。
「また、無茶しようとしてるでしょ」
「あぁ、お前を助けるためにな」
にっこりと笑ってイーブイを抱きしめる。
その気になれば、潰せそうなほど可愛らしいその体はとても暖かかった。
(俺が絶対守るからな)
心の中で堅く決心したバクフーンであった。
「あ、バクフーン見て! キンモクセイの木だ」
イーブイが指差すその先には、秋の代名詞であるキンモクセイが立っており、芳醇な香りを放っていた。
「良い匂いだね」
「香辛料として使えるかもな」
それを聞いてイーブイは目を丸くする。
キンモクセイのスパイスなんて知らないのかもしれない。
「砂糖漬けなんかにすると旨いぞ。塩とならんで高価だがな」
「じゃあたくさん持っていこうよ!」
小さな足ですてすてと走り出したイーブイ。
バクフーンはその後を歩いて追った。
「……あれ? 何だろう……」
「どうした?」
急に立ち止まったイーブイは、どこか一点を見つめて首をかしげている。
すかさずバクフーンもその先を見てみた。
「あれ……は」
地面に横たわる紫色の何か。
寄ってみればそれは、小さな生き物だった。
「うぅ……だれ……か」
見ればその生き物、全身傷だらけで倒れていた。
「――! 大変!」
「なっ、イーブイ!」
いきなり駆け出したイーブイに反射的にバクフーンも走り出す。
見ず知らずの相手に近づくのは危険である。罠の可能性だってあるのだ。
「大丈夫? 怪我してるの?」
「う、誰?」
「イーブイっていうんだ。心配しないで、僕らが何とかするから」
それを聞いて安心したのか、そいつは目を閉じて静かになった。
「おい、イーブイ」
「怪我をしてる。手当てしないと可哀想だ」
「まさか、連れて帰るのか?」
「ほっとけるわけないでしょ」
小さい体で、同じぐらいの大きさのそいつを持ち上げようとする。
しかし、さすがに無理だろう。
「たくっ、お前はほんとにお人好しなんだから。ほら、貸せ」
「え?」
「手当てするんだろ? だったら俺の方が早い」
そう言って、バクフーンは紫色の子狐を抱き上げた。
どことなく、イーブイと似ている体型だ。
「ありがとう、バクフーン」
「ほら、お前も掴まれ」
「え、いいよ。自分で歩くから」
「いいからほら、行くぞ」
いとも簡単にひょいっとイーブイを担ぐと、バクフーンは足を速めた。
キ
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