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光を広げる輝き
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「――っ! 染みる……」
「ちょっと我慢してね」
消毒液を浸した綿を傷口に当てながら、イーブイは優しく語りかけた。
なんだか、いつにもなくイーブイがお兄さんのように見える。
「また旨そうな奴を拾ってきたなイーブイは」
「しっ! イーブイが怒るぞ」
何気ないバンギラスを、バクフーンがなだめている。
こちらも兄弟に見えなくもない。仲は最悪なのが玉に傷だが。
「はい、おしまい。そういえば名前を聞いてなかったね」
「……ゾロア」
「助けられておいて、そんな態度かよ」
いつまでも顔を伏せたままの狐に痺れを切らしたのか、バンギラスがそう言った。
「バンギラス、そう言わないで。きっと緊張してるんだよ」
イーブイの言葉に、バンギラスはつまらなさそうに鼻息をあげる。
「ゾロア、だっけ。なんであそこに倒れていたんだ?」
「別に。ただ激しく転んだだけだよ」
ぶっきらぼうに言われると少し頭にくる。
見た目はイーブイと似ているが、性格は真反対だなとバクフーンは思った。
「とりあえず、しばらくはここにいなよ。他に仲間はいないの?」
その質問を聞くや、ゾロアはうつむいてしまった。
「なんだ、一匹狼か?」
「ククク」と笑うバンギラスにイーブイは鋭い視線を向けた。
イーブイも、バクフーンに見つけてもらえなかったら今のイーブイはいないだろう。
だからこそ、ゾロアの気持ちが分かるのかもしれない。
「大丈夫。なんなら一緒に暮らせばいいし」
「おっ、いいね。楽しみがひとつ増え――」
「バンギラス!」
「そのへんにしとけバンギラス。あまりイーブイをおちょくるな」
「うっ……」
二人からの挟撃にあったバンギラスは、ばつがわるそうな顔をして外に出ていってしまった。
「あいつはあんなやつだけどさ、別に悪いやつじゃないからな」
「バクフーンが言っても説得力ない」
クスクスと笑いながらイーブイが言うと、バクフーンは照れくさそうに頭を掻いた。
月が夜空のちょうど真ん中についた真夜中。
綺麗な満月が森を照らすその様子を、ゾロアは見ていた。
なんだか今日は眠れない。
そう思っていたのは、どうやらゾロアだけではなかったようだ。
「なんだ、お前もか」
不意にかけられた声に、方をびくりとすくませて後ろを振り向けば、そこにはバンギラスがいた。
「まぁそんなに堅くなるな。俺もなんか寝れなくてな」
よっこらせとゾロアの隣に腰を下ろし、ため息をつく。
「……綺麗な月だな」
黙ったままなのも何なので、とりあえずそんなことを言ってみる。
あまり話が得意ではないバンギラスには上出来だろう。
「……月は、苦手なんだ」
「ん?」
ずっと黙ったままのゾロアが初めてバンギラスに口を開いた。
驚きのあまり聞き直してしまったバンギラス。
「普段見えないものまで見えちゃう気がして」
「……。分かるかもしれないな」
「え?」
「オレも小さい頃はよく思ったもんだ、邪魔な光だなって」
自分の手のひらを見つめながらバンギラスは言った。
月の光を受けて、鋭い爪が鈍く光っていた。
「自分が嫌になるんだよな。本当の自分に気づくとさ」
昔の記憶を思いだすかのように静かに語るバンギラスを、ゾロアは黙って聞いていた。
「だから、お前が月が嫌いなのは分かるかもしれない」
「オイラは……」
ゾロアは、何かを言おうとして口を紡いだ。
「無理して言わなくてもいい。……今日のことは後ろのやつには内緒だな」
二人が振り返ると、イーブイとバクフーンがお互い寄
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