[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS
しゃわでー ないと ふぃーばー ヒャッッホォォォオオォオイ!!
01 02
03 04 05
− 親切なひと −
土曜日の夜。明日の夜。ハルに会える。土曜の夜。明日……。
僕の頭の中には、ただそれだけが繰り返し 渦巻き続ける。
目に見えてわかるほど、食料調達に集中できてない。
そのせいで、もう夕方が近づいているというのに
木の実のカゴは今以って軽いまま。魚篭に至っては見事に空っぽ。
それでもなお、僕の頭の中はハルのことでいっぱいだ。
辺りがだんだん暗くなってきて、ようやくハッと我に返った。
背負っているカゴの軽さに、
冷や汗を垂らしながら 恐る恐る振り返って中を見てみる。
「わっ……!」
これじゃあ流石にマズい。
このままでは、お母さんに叱られるどころか
食事すら危ういのは明白だ。
なんとかしようにも 今からじゃどうにも……。
「木の実が欲しいのですか?」
「えっ……?」
不意に、前方から聞き覚えのない声が聞こえる。
僕は思わず 聞き返すような声で返しながら、
背中のカゴに向けていた視線を 前に持っていった。
そこにいたのは、
綺麗な緑色をした蛇……?
透き通った声からして女性だろう。
彼女の背中にも木の実を入れるカゴが見える。
でも僕とは対象に、そのカゴの中には
溢れんばかりの木の実が積み込まれている。
まぁ、当然といえば当然。
「フフ、心配は無用です。
私はただの しがない旅人ですから。
それより、木の実が欲しいのでしょう?
困った時はお互い様です。
私のを分けて差し上げましょう。」
「えっ、ホントですか!」
よかった、どうやら悪いひとじゃないみたい。
そればかりか、見ず知らずだというのに
こんな親切にしてくれるなんて。
それにしても、
この森に旅人がやってくるなんて珍しい。
なぜなら、近くには 街や村がない。
それに、ここからもよく見える岩の山は
竜の山岳と呼ばれていて、
恐ろしいドラゴンが住んでいるという話だ。
だから 見知らない人と会うことなんて滅多にない。
「申しおくれましたね、
私はジャローダのタエです。
さぁ、カゴを貸してごらんなさい。」
僕は控えめにうなずいて、背負っていたカゴを降ろした。
タエさんは それを尻尾で近くに寄せて、
僕のカゴに木の実を移し替えてくれた。
タエさんのカゴの方が大きかったこともあって、
僕のカゴはすぐに、美味しそうな木の実でいっぱいになった。
甘い香りが鼻に漂ってくる。
「そ、そんなにっ! いいんですか!?」
「えぇ、可愛らしいシャワーズさんのためですからね。」
そういえば僕の方からは まだ名乗ってなかった。
お母さんからは、
「知らないひとに名前を訊かれた時は用心しなさい。」
って言われてるんだけど……。
ハルはもちろん別として、
このひとはとっても親切そうだし、いいよね。
「あっ、僕、シズクっていいます。」
「シズクさん。とてもいい名前ですねぇ……。」
ふと、タエさんの腕の蔓が ゆっくりと僕に伸びてくる。
とくにそれを云々する理由もなく、ただそれを目で追った。
間もなく、その蔓が僕の脇に忍び込んで、
こちょこちょと せわしなく這ってなぞり始めた。
「あはははっ!
よしてくださいよ、
僕、擽りには めっぽう弱いんですぅ!」
まるでじゃれ合うように 小さく転がり、
少しだけ手向かいながら言う。
すると、もともとひょろ長い目を更に細めて、
タエさんが 小さく口を開く。
「……フフ、どうやら
ちゃんと脂も乗っているようですね。
とりあえず美味しそうで安心しましたよ。」
「えっ……?」
小声だったために よくは聞き取れなかったけど、
確かに“美味しそう
[5]
→
▼作者専用
--------------------
[1]
TOP [2]
感想
[3]
RSS