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しゃわでー ないと ふぃーばー ヒャッッホォォォオオォオイ!!
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− 親切なひと −
”って……。いや、まさかそんな……。
「あ、あのぉ……。
……あ、あれっ……!?」
擽りが止んで ようやく気付いた。
四足が タエさんの蔓で縛られている。
それも、じゃれ合いなんてレベルじゃないくらいにきつい。
少し足に食い込んでいる。痛みまで感じ始めた。
「あのっ、離して……。」
「バーカ、せっかく捕えた獲物を だぁれが逃がすかよ。」
さっきまでの綺麗な女性の声が一転し、
まるで アニメの悪役に出てくるような低い声が僕の耳に飛び込む。
それに驚いて、体の頭からしっぽを通してビクンと震えた。
「やっぱガキは 女の優しさってのに弱ぇんだよな。
困ってるときに親切なねーちゃんが助けてくれた……。
とでも思ったか、ボウズ。」
どうやら男性だったらしい。ちょっと複雑な気分……。
いや、そんなことよりも、今は恐怖の方が何倍も大きい。
“美味しそう” “獲物”この単語から推測できることといえば……。
「さ、とっとと俺の腹ん中に入ってもらうぜ、目ぇ瞑りな、ボウズ。」
どうあっても受け止めたくなかった予想が見事に的中。
お願い、夢であって…… と、目をギュッと閉じて祈る。
なんてことしても、これは紛れもない現実だ。そんなことはわかってる。
再び目を開けると、そこには鮮やかなピンク色をした 狭い空間が見えた。
色は綺麗でも、涎は糸を引いてぬらぬらとテカり、見るからに汚い。
こんなところに無理やり入れられるなんてまっぴらだ。
けれど、心願とは裏腹に、その大口はどんどん僕に近付いてくる。
厳密に言えば、蔓の力によって僕が近づかされている。
「いやっ、やめてっ!」
残る力を振り絞って ジタバタともがいて抵抗する。
しかし、さっき擽られたせいで 思うように力が出せない。
もし出せたとしても、たぶん蔓の力の方が強いだろう。
「おいおい、目ぇ閉じてろっつっただろ。
大丈夫だって、すぐに終わるからよ。」
ついに、無情にも僕の前足は 桃色の地獄へと踏み込んでしまった。
刹那、“ぐちゅっ”という、とてつもなく耳に障る音と共に、
不快としか言えない柔らかい感触が僕の前足を容赦なく襲う。
これ以上進みたくない。
暗闇に続く喉の奥が、僕の視線を虜にしている。
「……ひゃっ!」
不意に、隙だらけの僕のお腹を 柔らかくしなやかな何かが這う。
それが舌だと理解するのに時間はいらなかった。
奇妙な動きで、ソレは僕の脇腹にまで行き届き、緩やかに撫でまわす。
舌の先端が細いだけあって、気色の悪さに加えてくすぐったい。
今にも吐いてしまいそうだ。
僕の体は 更に奥へと追いやられ、
とうとう後ろ足まで口の中に押し込まれてしまった。
おそらく今は、僕のお尻と尻尾だけが外に出ている状態だと思う……。
“パクッ……”
――にも拘わらず、口の扉は早々に閉じてしまった。
今いる空間が一気に縮む。
そのせいで僕は 強制的に伏せの状態にさせられ、
あの気持ち悪い 肉厚な床に押し付けられた。
「むぐふっ……!」
もとより恐怖で声が出なかったこともあったけど、
これじゃそれ以前の問題だ。
いつの間にか、僕を縛っていた蔓は離れてなくなっている。
でも当然、今更動くことなんてできない。
こんどはじっくりと僕を味わうかのように、
上あごと下あごが 互い違いにこすれ合う。
しかも さっきの舌よりも単調な動きだ。
更に、あのぐちゅぐちゅという嫌な音が、今回は耳元で奏でられている。
そのうえ不幸は まだ重なり、口が閉じられたことで
密閉された口の臭いを ダイレクトに嗅がされる羽
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