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しゃわでー ないと ふぃーばー ヒャッッホォォォオオォオイ!!
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05
− 出会い −
「う……ん……。」
もう朝か。
目に見えて疲れが取れていない。
昨日の夜 寝入ってから、さほど時間が経っていないように感じる。
身体を起こそうにも、ずっしりとした感覚が体を襲った。
まるで、重い何かが体にぶら下がっているようだ。
「……うっ。」
不意に襲った鼻を突く血生臭い匂いに、思わず顔を背けた。
昨日のことを忘れていたわけではない。
それでも予想以上の悪臭だ。
やっぱり、昨日のうちに洗っておくべきだった。
※ ※ ※
辺りはすっかり日が暮れて闇に染まった。
土曜日の夜。
そう、そろそろ彼との約束の時間だ。
さて、悪いことばかり考えるからダメなんだ。
そうさ、今夜はあのハルに会えるとってもいい日なのだから。
昨日助けてくれたドラゴンさんには、今度会ったときにお礼を言えばいい。
よしよし、こんな感じ。調子よく気持ちを切り替えていこう。
あ、もちろんお風呂には入ったともさ。
調子に乗ってちょっぴり香水も付けたりして。
オリエンタルなコロンってどうよ。
このしなやかなボディラインを活かして
セクシーな香りで魅惑の……あ、気持ち悪い? ごめんなさい。
そうだ、花を摘んでいこう。
あんなに僕と気だ合うんだから、
きっと僕と同じお花が好きに違いない。
綺麗な山吹色をした3輪ほど摘んで銜えた。
ん〜、いい香り。
※ ※ ※
いよいよあの大きな木が見えてきた。
近づくほど、また胸が高鳴り始める。
ああ、どうしよう。なんて声をかければいいんだろう。
思えば、そんなことも まだ決めてすらなかった。
だ、大丈夫、会っちゃえばなんとかなるさ。
木のそばに人影が見えた。
間違いなくハルは来ている。
お、落ち着け自分。スーハー、スーハー。
なるべく音を立てないようにして、木のそばに駆け寄った。
なぜか自分は俯いている。顔をあげることができない。
いま僕の視界に映っているのは、芝生の地面と巨木の根っこ。
でも、彼のゆっくりとした息遣いは小さく聞こえてきた。
じれったい! 自分でもそう思う。
そうだ、勇気を振り絞るんだ。
「こっ、こんばんは……。」
聞こえただろうか。
緊張しているせいか、恐ろしく小声で早口になってしまった。
も、もう一度……――
「は、はいっ!」
――言おうとした瞬間、
透き通ったきれいな声で返事が返ってきた。
でもこの声がハルという保証はまだない。
次は……。
「あなたの……お名前は……。」
さっきよりは自信を持って言えた。……つもり。
お願い、予想通りの返事であって……!
「ハ、ハル……ッス。」
よ、よかった。もうこれだけでも涙が出そう。
ただ文通相手と会うだけなのに、こんなにも感動するなんて。
ハルの声は未だに緊張している。
まあ、ハルらしいといえばハルらしいけどね。
「ふふ、よかった。
シズクです。
あ、そうだ、『せーの』で一緒に、
木の陰から 月の明かりに出ましょうよ。」
「わ、わかったッス。」
いよいよだ。ハルと向き合って会える。
ハルがどんな種族であっても驚かない覚悟はできている。
それだけは、随分前に決心しているんだ。
あ、でもタエさんだけは勘弁ね。マジで。
「「せーのっ……!」」
「……え…………。」
「…………あ……。」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことを言うんだ。
いま僕の目の前にいるのは……。
「あの時の……。」
――そう言い放ったのは彼。
僕も覚えている。
そりゃあ つい昨日のことなのだから。
あの時
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