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守る物
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* *〜ウル目線〜* *
リンドがどんどん遠ざかっていく。あまりにも自分が非力なのが悔しい。あまりにも非力なその手は空を掴み、アルトを掴むことは出来なかった。
…守り神失格だな…こんな何も守れない神なんて…。
自分で自分が恥ずかしく思えてきた。
「ウ…ウル様?ウルルはウル様だったの?」
やっと状況が飲み込めたのか、震えた声でライムが話しかけてきた。僕はゆっくりと「そうだよ。」と返事をした。
「……!」
{相当怒っているだろうな…。何もかも僕のせいであっという間に失ったんだ。元に戻ることを封じられた今、殺されたとしてもおかしくない。}
「ウル様!ごめんなさい!僕が…僕が、供物をあんな風に置いてきちゃったから…。それで、それで…」
「いや、それはライムが悪いんじゃないよ。全部僕が原因で起こったんだ。こんなんじゃ…守り…神…しっ…か…く」
…バタッ!
体に力が入らない。栄養不足というのもある。この獣人状態になっているには、実はかなりのエネルギーを使う。それを強制的に持続させられているのだ。とても体がもたない。
「ニ…ク。肉をクワセロ。」
な…何を言ってるんだ僕は。自分で自分の制御がきかない。防衛本能とかいうやつか。
「…ジュル。メノマエニ、ウマソウナヤツガイルジャナイカ」
ライムはまだ異変に気づかない。
{やばい…ライム、逃げろ!}
ガブッ!
「…ヘ?ウ…ウル様?なにを…」
僕の体はライムの腕にかじりついていた。ライムの幼い皮膚に鋭い牙が突き刺さっている。
「……グルルル。」
僕は満足そうにライムの血を舐めている。
{止まれ!僕の体…!}
思いとは反対にまだ血を舐め続けている。
「……ル様…ウル様!!!」
ライムが声を張り上げた。
すると、体の自由がきくようになった。
「はぁ…はぁ…お腹すいてるんですか?だったら、家にハムがあった気がします。本当は、それは僕の誕生日にみんなで食べる予定だったんですけどね…」
ライムは、どこかへ一旦立ち去るとすぐハムを持って帰ってきた。
「どうぞ。食べてください。」
ライムが持ってきたのは、2切れの薄いハム。僕は目にそれが入ると、奪い取るようにして食べた。
…ゴクンッ!
「はぁ…おいしかった。ありがとう。少しは元気になったよ。さて、結界を張り直しておかないとね。」
僕は神力を手に集中し、地面に手を添えた。これでまた結界は張れたはずだ。
「じゃあ、行くか!アルトのところへ。」
「うん!」
* * * *
丸一日は歩いただろうか。それでもまだ、リンドの巣にはたどり着けない。何せこの山の頂上にあるのだから。
ザァァァアア…
突然雨が降ってきた。ちょうどいいところに洞窟があったので僕たちは一旦雨宿りをすることにした。
「雨…強いねぇ…」
ライムが言った。その時、ライムの腹から
…ぐぅぅぅぅぅ
と、まぬけな音がなった。
「へへへ…!お腹すいちゃった…」
持ってきた食糧はすでに空だった。
「しょうがないな…僕が何か食べられるものを探してきてあげるよ。お前はここにいろよ。危ないからな。」
「うん。」
僕は洞窟の入り口に結界を張り、食料を探しにいった。
「…なかなかないもんだなぁ。」
予想外に食料探しは難しかった。食べられそうなものがなにもない。
「やばいな…」
と諦めかけたその時。
…ドンッ!
後ろから何者かに突き飛ばされた。崖を勢いよく滑り落ちた。
「いったたたた…。」
体を見てみると所々出血をしている。特に酷いのは足だった。とてもではないが歩く
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